歴史と過去問に共通するもの、わかりますか? 読み書きそろばん以前の考えるトレーニング

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さてここまでで「過去問を研究することの意味」がわかれば、「過去問」を「過去の歴史」と置き換えてもまったく同じであることに気づいたでしょうか。

歴史とは「人類の過去問」である

よく「歴史なんて昔のことを学んでも何の意味があるのかわからない。みんなそれ過去のことや昔話じゃないか」と言っている人がいますが、これは本当でしょうか。ここまで読んできた読者であれば、これは「絶対に出ない去年の過去問なんてやることに何の意味があるんだ」という疑問と一緒であることがわかるでしょう。

歴史を学ぶ大きな意義は、それを抽象のレベルで流れや関係性を見ることで教訓を導き、それを現在や未来に応用することにあります(過去問を抽象レベルで見ることと一緒です)。

「源頼朝という鎌倉幕府の征夷大将軍が1199年1月に亡くなった」という過去の具体的な事実は金輪際この世で起きることはないのです。

つまり具体的にこの事実を見るのであれば、絶対にこのことそのものが具体的に役に立つことなどありえないのですが、これを抽象レベルで「権力者の突然の死(や失脚)によって周囲の権力争いがどのように展開するか」というその後の出来事との関係性でとらえれば、いまの政治の世界にだって会社の経営にだって応用することは十分に可能なのです。

学校の世界でも、絶対的なリーダーが突然転校してしまったら、その後の友だちグループの関係がどう変化するかということにだって応用可能かもしれません。

こう考えてくれば、歴史の出来事を具体的なレベルで単に「〇〇年に××が□□した」と暗記するだけなのは、過去問の勉強でいえば、「2019年の過去問の問2-3の正解は3番だった」という答えを暗記しているようなものであることがわかるでしょう。これだけではほとんどその後の人生に役に立つことはありません。これは「具体と抽象」に当てはめれば、歴史の勉強を具体レベルでのみしているからです。

それでは、抽象レベルで歴史を学ぶとはどういうことでしょうか。それをここまで説明してきた「具体と抽象」の関係から考えてみましょう。

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