暗雲の東芝、「監理銘柄」回避が急務 配当と株主総会の扱いも難題
[東京 26日 ロイター] - 不適切会計問題に揺れる東芝<6502.T>が、上場廃止基準に該当する恐れがある「監理銘柄」入り回避の方策を迫られている。2015年3月期決算が確定できず、法定期限の6月末までに有価証券報告書(有報)の提出は難しい情勢だ。
監理銘柄を避けるため、同社は同報告書の提出延期を申請する方針だが、今後の対応は今月設置した第三者委員会による不適切会計問題の解明にかかっており、有報の提出時期のめどは立っていない。
東芝幹部によると「6月末までに決算を確定し、有報が提出できるかどうかの見通しは立っていない」状況だ。金融商品取引法の規定では、3月期決算の企業は6月末までに同報告書の提出が義務付けられており、東証は提出が遅れた企業を監理銘柄に割り当てる。ただ、事情によっては、基本1カ月程度の提出延長が認められ、東証の監理ポスト割り当ては一旦は回避される。
有報の提出を7月末まで延期できたとしても、第三者委の報告が7月中にまとまらなければ、決算の確定は難しい。しかし、同委員会の事態解明にどれほどの時間が必要なのか、東芝は依然としてその期間を明確にできていない。有報提出期限を何カ月延期するかも焦点だが、金融庁幹部は「(延長期間についての)話し合いは6月半ばになるのではないか。その頃には第三者委の調査も進んでいるだろう」との見通しを示す。
東芝は連結売上高6兆5000億円を超す巨大企業。同社は22日、第三者委の調査範囲について、インフラ関連に加え、テレビ、パソコン、半導体を対象にすることを公表。14年3月期の売上高は、インフラ関連で3兆1696億円、半導体事業で1兆1827億円(メモリを除くと3558億円)、テレビで2318億円、パソコンで7339億円にのぼる。
調査範囲の大半を占めるインフラ関連は、4月3日に設置した社内役員らの特別調査委員会がすでに調査済みで、5月15日までに9件の不適切会計を見つけ出した。外部の弁護士などで構成する第三者委が、新たに個別案件を徹底的に掘り下げれば調査期間が長引く可能性もあり、有報提出が大幅にずれ込む懸念もくすぶる。
<株主総会、通常開催困難に>
開催時期が迫っている6月の定時株主総会の取り扱いも、東芝にとって緊急対応が必要な難題だ。同社の定款は、定時株主総会の開催を毎年6月と定めている。だが、6月中に決算を確定できそうにない状況下で株主総会を開いても、株主に説明できることは限られる。
株主総会の招集通知は2週間前までに行えばよいとされている。東芝は昨年6月25日に開催した前回の株主総会については同年の5月30日に招集通知を発送しているが、今年は異例の対応を迫られる。
2011年の東日本大震災の後、法務省は株主総会の開催について「天災等のような極めて特殊な事情の場合」として、定款に定めた時期に形式的に定時株主総会を開かなくてもよいとの意見を公表した。これに基づき、東芝の内部では、定款に「6月」と記載している総会を7月以降に開催することが可能かどうかを検討している。6月中に形式的に開催し、延期を決議することも技術的には選択肢になるという。
同社の株主の議決権の基準日は3月31日。会社法では、株主の権利行使は3カ月を超えることができないとされているため、すでに東芝は株主の重要な権利である配当について、6月末までに手続きが間に合わないと判断しており、3月末の配当は「未定」から「無配」に決定している。
田中久雄社長は、配当見送りを早期に決定したことについて「14年度としてはもう期日が過ぎているので下期の配当はできない」として、復配は15年度以降にする意向を示している。
株主総会を開くなら、役員の経営責任も問われることになる。同社の定款では、取締役の任期は1年ごとの定時株主総会までとされている。新しい取締役の候補を選任するためには、不適切会計に至った原因究明と再発防止が不可欠で「すべては第三者委の調査がいつ終わるかにかかっている」(東芝幹部)状況が続いている。
*写真を替えて再送します。
(村井令二 取材協力:和田崇彦 編集:北松克朗)
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