マイナ保険証、今度は「窓口負担誤表示」多発の実態 信頼失墜し利用率が低下、紙の保険証廃止は無理筋

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この問題は、4月にオンライン資格確認システムを導入してから新たに発生した。医療事務の担当者が問題に気付いてレセコン業者に尋ねたところ、「限度額情報が入力されていないと負担割合は一律同じになる」という回答だった。

9月14日付のシステム更新でオンライン資格確認システムからの負担割合の情報が直接、レセコン端末に入るようになり、現在はこうした問題は解消したという。

しかし、マイナ保険証をめぐる事務負担が軽減されたわけではない。ふたわ診療所の近藤純医事課事務主任によれば、「マイナ保険証のカードリーダーの操作は高齢者にとってわかりにくい。ボタン一つを押すにしても、それが何を意味するのか理解が難しい。今でこそ利用者が少ないものの、来年秋に紙の保険証が廃止され、マイナ保険証に一本化された場合、窓口で混乱が起きかねない」という。

保団連の調査で全国規模での誤表示が判明

窓口負担割合の誤表示の問題については、開業医らで結成される全国保険医団体連合会(保団連)が7月末から8月末にかけて全国調査を実施。39都道府県374市区町村978医療機関で、券面と異なる窓口負担割合が表示された事例が見つかったと報告された。「1つの医療機関で20~30件もの誤表示が見つかったところが散見されるうえ、50件もの誤表示が確認された事例も2件あった」と保団連は報告書で明らかにしている。

厚労省は誤表示の再発防止策として、同様の問題が発生しないように事務処理マニュアルを改訂して正しい事務処理手順を市町村や健康保険組合などの保険者に通知した。また、保険加入者(被保険者)からの相談に対応し、正しい負担割合を本人や医療機関に伝える仕組みを構築するよう市町村などに求めている。

市町村国保などが保有する情報と、「オンライン資格確認」と呼ばれるシステムで表示される情報を突き合わせ、正しく表示されているかどうかを市町村国保などの保険者がチェックする仕組みも、2024年夏までに導入する。

レセコン表示の問題については、レセコンメーカーへ対応状況に関して回答を求め、すでに対応していると回答したメーカー名と機種をホームページ上で掲載している。

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