ジャニーズ、にじみ出る「怒り」が危険である理由 「NGリスト」騒動よりもっと深刻な問題

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ジャニーズ事務所が今回公表したリリース(画像:公式HPより)

もちろん、今回の文書を公表したこと自体は間違っていませんし、「一刻も早く一連の問題を解決したい」「そのためにNGリストの問題で止まっていられない」からこその急ぎ対応も適切でした。ただ惜しむらくは、今回の文書を「事実調査の公表」に終わらせてしまったこと。

事務的な文書の公表に終わらせず、最後に東山紀之社長と井ノ原快彦副社長の署名付きで、実感を込めた生身の言葉を添えれば、これほど批判を集めることはなかったのではないでしょうか。具体的には、管理責任者としての非を認め、今後ないようにすること。さらに、被害者救済についても、少しふれるなどの見る人々の感情に訴えかけるような言葉で、経営の経験とスキル不足をセルフフォローしたいところでした。

「ジャニーズ性加害問題当事者の会」は3度目の会見を求めていますが、会見に限らず、すべての対応で2人に求められるのは、自らの経験やスキルの不足を前提にした振る舞い。やると決めた以上は、たとえ演じてでも、「未熟であることを隠さず、一生懸命に取り組み、感情に訴えかける」という姿を見せたほうが批判をやわらげられるでしょう。

相次ぐ批判でにじみ出る怒りの感情

そしてもう1つ、致命的なミスとして挙げておかなければいけないのは、やるべきことの優先順位が置き換えられ、怒りの感情がこぼれはじめていること。この1週間あまりジャニーズ事務所は多くの文書を発表しましたが、あまりの批判に耐えかねたのか、徐々に怒りの感情がにじみはじめています。

10月5日に「弊社所属タレントに関する一部週刊誌記事について」と題して、木村拓哉さんに関する週刊誌報道を「書かれていることは全て事実無根」と全面否定。これだけで終わらせればいいところを最後に「弊社としてはこのようなタレントの名誉や信用を著しく毀損する事実無根の記事に対しては強く抗議する」というフレーズを添えて怒りをあらわにしました。

翌々日の7日には、「弊社に関する一部インターネット記事について」と題して、藤島ジュリー景子前社長が会見場にいたという記事を「全くの事実無根」と再び全面否定。さらに「到底看過できません」「断固として抗議」「大変遺憾」などと怒りを感じさせるフレーズを続けました。

9日にも、「故ジャニー喜多川による性加害に関する一部報道と弊社からのお願いについて」と題して、“虚偽の告発”の存在を発表。「被害者でない可能性が高い方々が、本当の被害者の方々の証言を使って虚偽の話をされているケースが複数あるという情報にも接しており」「報道機関の皆様におかれましては、告発される方々のご主張内容についても十分な検証をして報道をして頂きますようお願い申し上げます」などとつづりました。

こちらは言葉づかいこそ丁寧ではあるものの、その内容はメディアへの強烈な牽制。「十分な検証をして」のフレーズを見て、「これはジャニーズからの宣戦布告だ」とみなした人もいるでしょう。

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