なぜ経済学者も政治家もバカになったのか? 今、日本に本当に必要な経済政策とは何なのか

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では最後に、私が常識による政策を提示しよう。

まず、インフレ。インフレになれば、手持ちの貯金、給料の価値は目減りする。だから、消費を控え、節約するしかない。悪いのはインフレである。物価が上がらないのは、むしろ生活者にとって望ましいことである。

デフレスパイラルという、物の値段が際限なく下落していく世界は恐怖である。だが、大恐慌のときと違って、今は街に失業者もあふれていないし、物価は上がらなかっただけで、暴落したわけではないのだ。

円安を止めれば、ほとんどの問題は解決する

では、円安はどうか。海外旅行に行けない。海外の投資家に大事な土地も企業も人材も買い尽くされて奪われてしまう。しかも、日本は貧しくなる。

韓国よりも所得が低いのは、円安だけのせいだ。そして、現在起きているインフレも、半分以上は円安が原因だ。だから、過度な円安を解決し、妥当といわれる1ドル=90円前後まで円が戻れば、ほとんどの問題は解決してしまう。

景気はどうか。日本の景気はよい。デフレギャップすら存在しない(そもそもデフレギャップは、つねに存在する方向にバイアスがかかっているデータである)。失業率はきわめて低い。誰もが、人手不足で困っている。鹿児島でも、青森でも、大都市だけでなく、日本中で働き手が消えている。

景気は問題でない。景気対策は一切要らない。需要も消費も喚起する必要はない。問題は実質所得の目減りであり、それは円安を止めれば、インフレも軽減され、問題は解決する。

物価と賃金の好循環はどうか。そういうものは存在しない。世界中の経済の歴史において、物価主導で賃金がそれを上回って上昇し、経済がよくなったことは一度もない。ありえない。いちばんよくてスタグフレーション(景気低迷下の物価上昇)である。

そもそも勤労所得のない消費者が、日本国民の半分である。物価が上がれば、国民全員が困る。賃金は転職などにより交渉により企業からもぎ取るものである。インフレが賃金上昇をもたらす理由は、交渉なしでは1つもない。インフレだから、という交渉材料がふえるだけのことだ。

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