日本の防衛産業は鎖国から開国へシフトする キーマンの防衛省装備政策課長に聞く<下>

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堀地徹(ほっち・とおる)●防衛省経理装備局装備政策課長。1963年群馬県生まれ。1987年京都大学法学部卒業、防衛庁へ。装備施設本部原価管理課長、防衛政策局防衛計画課長などを経て2013年7月から現職。

―― 一般に日本のメーカー、特にプライムメーカーは主体的に輸出ビジネスを育てていこうという気位がなく、政府がやるなら追従していこうという雰囲気があるが。

日本のメーカーが他国と違うところは、日本国内でビジネスが維持できることだ。それに対して、フィンランドやスペインなどは自国市場が小さく、国際市場での販売が不可欠であり、市場で生き残るためには強い競争力が必要だ。その動きを政府がバックアップするシステムが出来上がっている。

これに対してわが国のメーカーは防衛省だけが顧客だったので海外の情報に無関心だった。このため自分たちの製品やサービスのバリューが市場でどの程度の価値があるのか把握していない。そこの認識、マーケットリサーチがまずは必要だ。そのやる気を喚起するために、我々も多少突き放すようなスタンスを取る必要がある。

中小企業へのサポートは検討する

――輸出企業、特に中小企業への支援は?

UKTIや諸外国の機関とも接触して企業へのサポートの仕方などの情報収集している。特に資金力や営業力に限界のある中小企業へ国がどのように支援するか検討する必要がある。実際の企業のサポートは経産省が行うことになるだろう。

――今年はロンドンで9月に開催されるDSEIに防衛省がブースを出すそうだが。

予算は確保しており、日本パビリオンに出展する。技術研究開発や防衛政策を理解してもらうことを目的としている。またそれが出展する民間企業との相乗効果を発揮することになればと思っている。

――中小企業の海外の軍事見本市などに対する経済的な支援は考えているか。

それは一義的には経産省の産業振興で対応するものだと思う。しかしながら、中小企業にどのようなニーズがあるのか、どのようなサポートが効果的なのか、防衛省に何ができるのか、ということは、防衛省としても中小企業へのヒアリングや有識者検討会などの議論を通じて検討していきたい。

――防衛省はプライム企業以外のベンダーや、防衛産業に入っていないが高い技術力をもっている潜在的なサプライヤーである企業の情報に疎いのでは。

今までの防衛省の防衛調達の取り組みでは、そのような傾向があった。しかしながら素材、サプライチェーンなどを把握しておくことはロジスティクスを運営する上でも、装備品を運用する意味でも重要だ。装備の開発をする上でも、どこに強みが有り、またどこに弱みがあるのかを把握する必要がある。

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