【産業天気図・通信業】新規参入に番号ポータビリティー、光の台頭など携帯・固定ともに乱戦

これまで各社が多額の利益を享受してきた国内の携帯電話市場は、勝ち負けが鮮明になってきた。
 今05年中間決算ではNTTドコモ<9437.東証>が通期利益予想を上方修正。auを擁するKDDI<9433.東証>は期初見通しを維持。そして、苦戦続くボーダフォン<上場廃止>は中間期の利益が大幅に低下した。06年後半には番号ポータビリティー(電話会社を乗り換えても電話番号をそのまま持ち運べる制度)が導入され、顧客の流動化が高まる公算。そこで大幅なシェア拡大を目論むのがKDDIだ。国内シェア6割近くに達するNTTドコモも負けじと料金改定などを仕掛ける可能性もある。業界内では競争が熾烈になるが、携帯電話の契約者数は9000万に迫り、ここから大幅な契約者増は望めない。そのため、顧客という果実を逃したところは、これまで以上に利益を落とす可能性もある。
 さらに05年11月には、周波数を管轄する総務省から、ソフトバンク<9984.東証>、イー・アクセス<9427.東証>、アイピーモバイル<非上場>の3社に携帯電話事業新規参入の許可が下りた。これで既存3社の戦いは新たな局面を迎える。「日本の携帯電話市場は成熟しているというが、あれはウソ。まだまだ伸ばせる」とイー・アクセスの千本倖生会長は自信たっぷり。ソフトバンクも「8兆円の携帯電話市場を安売り攻勢で小さくするのは簡単。だが、そんなつもりはない。8兆円市場ならば10兆円市場へ拡大させたい」と意欲を見せる。新規各社のサービスの一端が見え始めるのが06年の後半。既存3社は、番号ポータビリティー制度と新規参入者という二正面作戦を強いられることになる。

◆衰退する固定は「ブロードバンド」に活路探る

一方、固定電話市場は衰退の一途を辿る。ソフトバンクやKDDIが、NTT<9432.東証>のユーザーを奪い取るため格安の固定電話サービスを本格展開しているが、契約数は思うように増えていない。それどころか、固定電話収入の減少で大幅な減益を覚悟していたNTTグループが中間期には逆に業績見通しの上方修正を行ったほどだ。今後は固定電話ではなく、「固定系ブロードバンド」の拡大がカギを握る。
 NTTが光ファイバーサービス「Bフレッツ」の拡大を推し進めれば、KDDIも光サービスの本格化で応戦。05年10月には「TEPCOひかり」を展開する東京電力<9501.東証>と包括提携を行い、来年からは個人向け光ファイバーサービスの拡大に本腰を入れる。すでに市場全体ではインターネット接続の主流だったADSLサービスの純増契約数が伸び悩み、光サービスの契約がそれを上回るようになってきた。この動きは、ようやくADSLサービス「ヤフーBB」が黒字化してきたソフトバンクにとってはやや不利。06年から07年にかけて携帯電話事業の立ち上げ準備のため、再び費用もかさむ。NTTを筆頭とする大々的な光サービスキャンペーンは、ソフトバンクの収益の足を引っ張ることになりかねない。
 彼らの熾烈な競争とは別に、NTTの積極的な光ファイバー網拡大の恩恵を受けるのが、光アクセス工事を請け負う電気通信工事各社だ。目下、受注をこなしきれないほどの注文が集まっており、作業班確保のためにコストがかさんでいる企業もあるほど。その中で、協和エクシオ<1951.東証>やコムシスホールディングス<1721.東証>などの大手工事会社は受注をこなしつつ利益を拡大中。ソフトバンクやイー・アクセスなど携帯電話事業での新規参入によって、光アクセス工事に加えて携帯電話基地局の設置工事も来年以降は増えるとみられる。ユーザーの取り合いに熾烈な競争を繰り広げる裏で、インフラ整備を請け負う工事会社にとっては見通しの明るい1年となりそうだ。
【井下健悟記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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