マクドナルド、不条理な「退職勧奨」の実態 社員に示された"リストラ通知書"を独自入手

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「希望退職ならまだしも、再建の名のもとに退職勧奨によって人員削減に走るのはおかしい。本社スタッフを削減すれば店舗オペレーションにも影響が出る。こうした行動はすぐさまやめるべきだ」(ユニオンの根岸和弘・中央書記長)

人手が必要な中で早期退職を募集

「週刊東洋経済」2015年5月23日号(18日発売)では深層リポート「マクドナルド絶体絶命」を掲載。米本社を含むマクドナルドの危機の全容を分析しました(上の画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)。

そもそも今回の早期退職募集については、発表当初から疑問視する声があった。その理由の1つが、同じく再建プランに盛り込まれた「地区本部制の復活」だ。

日本マクドナルドにはもともと地区本部制はあったが、コスト削減を目的に原田社長時代の2004年に、すべての機能が本社に集約された。

今回新たに設ける地区本部制では、東日本、中日本、西日本という3つのエリアに分け、執行役員や関連部署をそれぞれ配置。人事、財務といった機能を権限委譲する。現場と本部との距離を縮め、地域に根ざした経営判断を行っていくことを狙いとしている。

前出のマクドナルドOBは「現場力の立て直しが期待できる」と評価する一方、「地区本部制の導入で人手がかかる中、なぜ今、早期退職に踏み切るか理解できない。積極的に人手を増やす必要がある時期にリストラをするのは矛盾している」と憤る。

5月14日の労使交渉の場で、この矛盾点についてユニオンが指摘したところ、「会社側は『少数精鋭で地区本部制を運用する』と回答した」(根岸中央書記長)という。ユニオンとしては「少人数運営によって過重労働が頻発しないか監視をしていく」(同)と、これまでよりも警戒感を強めている。

5月21日には新メニュー施策の発表を控えている日本マクドナルド。売り上げの回復だけではなく、労使のわだかまりを解かなければ、復活への道は遠のくばかりだ。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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