「iPhone15」で見せつけたアップルの周到戦略 計画的な「長寿命化」がもたらしたブランド価値

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iPhoneはアップルの全社売上高の半分以上を稼ぎだす重要な製品だ。廉価モデルのiPhone SEシリーズの需要が一巡したこともあり、年末商戦を過ぎても安定的にiPhone 15(あるいはさらに低価格の領域ではiPhone 14)が売れて、同社の売り上げを支えるはずだ。

アップルの売上高構成比

しかし、さらに長い時間軸でアップルの戦略を俯瞰すると、また違った景色が見えてくる。

すでに必要な人の多くに行き渡っているスマートフォンの市場は、もはや大きな成長が望めない。iPhoneのカメラ機能などを磨き上げることで買い替えや他社からの乗り換えを誘導してきたアップルも、いずれはその限界に行き当たる。

この成熟市場におけるアップルの本当の強さは、“陳腐化しない製品開発”を行ってきた点に尽きると言えるだろう。

ワンストップ体制がなせる長期戦略

”iPhone対Android”、”アップル対グーグル”といった視点で比較されることもあるが、ハードウェアメーカーとして捉えると、アップルはそうした対比からは計り知ることのできない圧倒的なポジションを確立している。

カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチが発表した2022年の世界市場におけるスマートフォン端末シェアでは、売り上げトップ10のうち、8機種がiPhoneシリーズだった。

これは業界第2位であるサムスンの実力が低いから、というわけではない。サムスンの場合、スマートフォンを構成する重要な要素のうち、OS(グーグルのAndroid)の長期戦略を自分たち自身では描けず、将来の買い替え時までを含めた戦略を練ることが困難なためだ。

一方のアップルは、OSを含めてiPhoneに関わるあらゆる要素を自社で投資し、長期的な視野で開発を進めている。

たとえば推論処理を行うNeural Engineを活用した機能をiPhoneに次々と追加。動画・静止画内のテキストを自動認識する、写真内の被写体を自動的に切り抜く、といったものだ。今回も自動ポートレートや動物の認識、オーナーの声の認識など、数えきれないほど新たな要素が加わった。

これらは単なる機能の追加にとどまらず、製品の性能が毎年向上することで、より高精度、言い換えればより高い体験の質の提供につなげられる。

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