三菱「MRJ」開発の難関、型式証明って何だ? 半世紀ぶり国産旅客機の審査担当者に聞く

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――国交省にとって、そうした輸入機体に対する審査と今回の審査の違いは?

ボーイングやエアバスなどの機体は、それぞれ自国の航空当局による厳しい安全認証審査をパスしたもの。もちろん、日本の航空当局もその型式審査を行うが、設計・製造国での安全認証を信頼・尊重し、検査自体は重要な事項にポイントを絞った補足的なものだ。

一方、今回のMRJは、日本が設計・製造国として第一義的な審査責任を負っているわけで、同じ型式審査であっても次元がまったく異なる。その責任は極めて重く、日本の航空当局の審査能力、信頼性が世界で問われる。

――国内でMRJの型式認証が下りれば、米国や欧州の航空当局は日本での審査結果を信頼・尊重してくれるのでしょうか。

米国のFAAに関していうと、日本の審査能力を見極めようとしている段階。最終的に日本の航空当局に信頼できるだけの審査能力があると判断できれば、日本の審査結果を最大限尊重する、というスタンスだ。

日本の審査能力も問われている

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MRJの受注の大半は米国の航空会社が占めている

――仮に信頼できるほどの審査能力がないと判断された場合は?

日本で安全認証が下りても、米国での認証取得には時間を要するかもしれない。MRJにとって、米国は極めて重要な市場。受注の内訳を見ても、米国のエアラインからのオーダーが大半を占めており、そうした事態は絶対に避けないといけない。

したがって、三菱だけではなく、日本の航空当局がしっかりしていないと、このプロジェクトを駄目にしかねない。ここにいる検査官は皆、そういった緊張感を持って、日々の審査・検査に当たっている。

――審査する側にとってのMRJとは?

国産旅空機の開発・製造は半世紀ぶりのチェレンジであり、日本の航空機産業の未来が懸かった極めて重要な歴史的プロジェクト。何としても成功してほしいし、成功させないといけない。それは審査官全員に共通した思い。

もちろん、だからといって、審査を甘くすることは絶対にない。万が一、重大な事故が起きたら、このプロジェクトの成功はありえないし、日本の航空当局の信頼性も失墜する。成功してほしいからこそ、厳しい検査をやっている。三菱とは立場が異なるが、われわれも審査を通じて、安全で優れた飛行機を日本から世界に送り出すんだという思いでやっている。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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