EV首位テスラを猛追、急成長する中国BYDの実力 利益や販売台数は倍増。日本でも攻勢強める

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BYDは海外進出にも力を入れており、すでに70カ国以上で販売を開始している。前出の湯氏は「各国のEVの政策を活用しながら、海外ではコストパフォーマンスで十分勝負ができる」と分析する。

海外の生産拠点はEVバスの工場を持つにとどまり、現状、乗用車は中国で生産し輸出している。が、海外で乗用車の生産拠点の整備を進めており、タイでは年間15万台のEVの生産能力を持つ新工場を2024年に稼働する予定。ブラジルにも工場を新設する計画だ。

SUVに続き小型EVを日本へ投入

BYDの海外進出は日本にも及ぶ。昨年7月に乗用車市場への参入を発表し、今年1月からEVのSUV「ATTO 3」の販売を開始した。1月から8月までに700台を販売した。全国各地でディーラー業を営む企業などとディーラー契約を締結し、2025年末までに100店舗以上の整備を目指す。

小型EV「ドルフィン」。日本向けに仕様を変更するほどの力の入れようだ(編集部撮影)

日本ではEVのみを販売する投入第2弾として小型EV「ドルフィン」の価格公表と販売開始を9月20日に予定している。シンガポールやオーストラリアでも販売しており、グローバルで43万台の実績を誇る。日本市場で受け入れられるように、立体駐車場に対応できる車高への調整や、ペダルの踏み間違いによる急加速を防止する誤発進抑制システムなどを追加している。

もちろん、日本は新車販売に占める輸入車比率が6%弱(大半はドイツ車)という国産車優位の市場だ。しかも、新車販売に占めるEV比率が約2%(2022年度)とEVの普及も進んでおらず、BYDが大きなシェアを獲得することは考えにくい。

中国メーカーである以上、アメリカ市場への展開も限界がある。それでも日本メーカーの金城湯池である東南アジアを中心に海外でもBYDの攻勢が強まることは確実。当分、BYDの動向から目を離すことはできそうにない。

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井上 沙耶 東洋経済 記者

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いのうえ さや / Saya Inoue

商用車・部品メーカーを担当。大学時代は写真部に所属し、社会学を中心に学ぶ。趣味は、漫画を読むこと、映画のサントラを聴くこと。

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