EV首位テスラを猛追、急成長する中国BYDの実力 利益や販売台数は倍増。日本でも攻勢強める

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中国の自動車メーカーの多くは国営で、かつ、日系など海外の自動車メーカーとの合弁事業が収益基盤になっている。一方、BYDは民営企業で海外メーカーとの合弁事業を持たない。2008年にPHV、2009年にはEVの販売を開始するなど、NEV市場でもいち早く自社ブランドを育成してきた。

さらに、自前で車載電池を調達できる点も強みだ。2021年に発表した自社製の「ブレードバッテリー」でリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)を採用した。LFPはコストと安全性に優れるが、エネルギー密度が低いため日本勢を含めた既存の自動車メーカーはEVへの採用に後ろ向きだった。BYDはパッケージングの工夫で弱点を補うことでEVへの採用につなげた。

低コストで安全性が高い反面、エネルギー密度に難があるリン酸鉄リチウムイオン電池をパッケージの工夫で使いこなす(撮影:尾形文繁)

BYDはバッテリー以外にも、モーターといったコア部品も内製しているため、トータルでEVの製造コストを抑えることに成功している。航続距離が400キロメートル台のコンパクトカー「ドルフィン」の販売価格は中国で250万円前後を実現している。

EVとPHVの二刀流が強みに

EVとPHVの二刀流も強さに繋がっている。中国の自動車市場に詳しいみずほ銀行主任研究員の湯進氏は、「BYDはPHVでガソリン車の需要を取り込むことに成功している点も大きい」と指摘する。中国のEV市場は高級車と走行距離が短い超小型EVが多く、長距離を走行する中間層にはガソリン車の人気が根強い。

電池が切れても給油して走れるPHVは走行距離の不安がないが、従来は高級車が中心だった。そうした中、BYDはコスト競争力を武器にPHVの価格を引き下げ、PHVの販売台数も大きく伸ばしている。EVとPHVの合計で「規模の経済」が働かせることができている。

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