段差なしでバリアフリー「超低床電車」仕組みは? 機器類の配置を工夫、車軸のない特殊構造も

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超低床電車には出入口と通路部分の全てが超低床で、高さの違う部分をスロープで結んだ100%超低床車と、一部の床が高くなっていてステップで上下する100%未満の超低床車がある。後者は主に台車の構造と駆動系レイアウトなどによるもので、出入口に段差はなくバリアフリーの面で支障はない。

えちぜん鉄道 キーボ 車内
100%超低床のえちぜん鉄道L形「ki-bo(キーボ)」。通路部分は全て超低床構造。やや高い台車部分の床とはスロープで結ばれている(筆者撮影)
福井鉄道F2000形 車内
福井鉄道F2000形「FUKURAM Liner(フクラムライナー)」は運転台背後部分の床が高い部分超低床車。前後のドア間は段差のない超低床でバリアフリー面で支障はない(筆者撮影)

現在、超低床電車は東京都電荒川線と東急電鉄世田谷線以外の路面電車各線に導入されている。両線はホームのかさ上げなどでバリアフリー化したため、超低床電車を導入する必要がなかった。また、軌道線でありながら早期に車両のステップを廃止した路線として、京阪電気鉄道石山坂本線と嵐電(京福電気鉄道嵐山本線・北野線)が挙げられる。どちらも停留場のほとんどが専用軌道にあったためホームのかさ上げが容易だったからだと考えられる。

都電荒川線
東京都電荒川線は1970年代にホームを嵩上げしてバリアフリー化を実現したため超低床電車が存在しない(筆者撮影)

一般的には既存のホームを活用してバリアフリー化したほうが設備投資を抑えることができ、さらに超低床電車を導入すれば補助金を受けることができるため、超低床電車を導入したほうが有利だと思われる。

国内初の超低床電車は「ブレーメン形」

超低床電車は1984年にスイスで導入されたのが最初で、国内では1997年に運行開始した熊本市交通局9700形が初だった。この車両は新潟鐵工所(現・新潟トランシス)がドイツAEG社(後のアドトランツ、現・ボンバルディア)と業務提携して製造した100%超低床電車で、初導入がドイツ・ブレーメン市だったことから「ブレーメン形」と呼ばれる。

車体は新潟鐵工所が使用線区の環境に合わせて設計・製造を行い、台車やモーター、駆動装置、電気機器、ブレーキ装置などをドイツから輸入した。外観はアドトランツ社のブレーメン形のデザインを踏襲している。

熊本市交通局9700形
国内最初の超低床電車である熊本市交通局9700形。車体は新潟鐵工所が熊本向けに設計・製造している(筆者撮影)

9700形は2車体連接車で、編成長は18.55m。車体中央に台車1個を装着する。左右の車輪は独立していて車軸がないため、台車部分も含め100%超低床化されており、通路の高さは360mm。出入口の高さは300mmで、通路とはスロープで結ばれている。運転席付近の出入口にはリフトを備え、ホームとの段差を解消することが可能だ。

駆動方式は特殊な構造の車体装架式直角カルダン駆動を採用。モーターは車体の座席下にレール方向に搭載して片側の車輪を駆動し、反対側の車輪へは床下を通るねじり軸によって駆動力を伝達する。床下機器の搭載スペースがないため主要機器は屋根上に搭載している。

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