増税の影響を除けば消費者物価指数の上昇率は徐々に低下してきている。だが、消費者はむしろ上昇率が高まっていると感じている。
日銀の「生活意識に関するアンケート調査」によれば、2012年12月調査では物価が上昇しているとする人の割合(「かなり上昇」「少し上昇」の合計)は38.5%だった。この割合は2013年に入って上昇しはじめ、2015年3月調査では84%にも達しており、消費増税直後の2014年6月調査の71.4%よりも高まる傾向にある。
新商品への入れ替えにより値上げされている
もともと消費者は統計数値以上に物価が上昇していると感じる傾向があるが、それだけではあるまい。小売店では単純な値上げではなく、価格は据え置き内容量を減らして、実質的な値上げが行われることもある。店頭で販売する商品の銘柄を変えるなどして、以前との価格の比較をしにくくすることも行われている。
銘柄変更で投入される新商品は性能や品質が向上していたり、味がよくなっていたりするなどの点で、以前の商品よりも高付加価値であることも多い。これは価格上昇ではなくて、実質消費の増加と考えるべきものだ。
しかし、一橋大学経済研究所の阿部修人教授は、2014 年4 月の消費税率改定以降、新商品への入れ替えが単価インフレ率を引き上げる効果が大きくなっており、割高な新商品が多くなっていることを示唆している、としている(「最近の価格指数の動向と新商品の影響について」一橋大学経済研究所、阿部修人教授 経済社会リスク研究機構 Newsletter No.3、2015 年3月)。
消費者物価指数では、容量の増減の影響を調整するなどしてはいるが、新商品に切り替えられる際に同時に事実上の値上げが行われた場合には調整は難しいだろう。物価上昇が加速していると感じるのは単なる消費者の錯覚ではなくて、現実であるかも知れない。
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