角川辞め「香川」で予約制の古書店開いた彼の境地 予約があれば店を開けるスタイルを貫く理由

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どうやら藤井さんは仕事が軌道に乗ると退屈してしまう性分らしい。古本屋を辞めて別の仕事をする可能性もあるのか、今後の展望も聞いた。

「古書店を辞めるつもりはないです。でも活動の幅を広げる可能性はあるかもしれません。実はすでに考えていて、俳優になるために動き出しています。

本屋が執筆活動や講演活動をやったりするのは、今や普通で、それを僕がやっても面白くない。でも本屋が傍らに俳優をやるのは、珍しくて面白いんじゃないですか?

むしろZ世代には映画俳優としての僕を、先に知ってほしいくらいですよ。そのうえで『実はあの人は古本屋でもあったのだ』と思われるのが理想です」

自分の心が向かう地はどこか

そう煙に巻く藤井さんだが、事実として今年撮影のいくつかの映画に出演している。また「なタ書」の空間は、国内外のさまざまな媒体のロケ地として人気だ。藤井さんの突出した個性や、それが反映された「なタ書」の空間の魅力ゆえんだろう。

映画『僕だけの記憶』の撮影風景(写真提供/藤井佳之)

コロナ禍以降地方移住に興味のある若者が増えてきている。内閣府が2020年5月から6回(最終調査2023年3月)実施した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によれば、東京圏在住者の地方移住に「強い関心がある・関心がある・やや関心がある」と答えた割合は、全年齢で35.1%、20代に限ると44.8%にものぼる。

個人の幸せに焦点をあてた場合、首都圏で暮らすのが良いのか地方で暮らすのが良いのかということに、明確な答えなどない。ただ首都圏一極集中が当たり前と思わずに、自分の心が向かう地があれば、そこで個性を発揮することも生き方だ。情報網や交通網が発達した今ならばなおさら、東京バージョンだけにとらわれることはない。

蜂谷 智子 ライター・編集者

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はちや ともこ / Tomoko Hachiya

東京都出身。上智大学大学院文学研究科博士前期課程修了。語学教材の専門出版社を経て2014年よりフリーランスのライター・編集者として活動。住宅・教育分野の執筆多数。1児の母。Facebookはこちら

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