高すぎる日米の「株価崩壊」がゆっくり進んでいる 今後の日経平均株価は下落加速の局面を警戒

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さて、日本株に話を移そう。筆者は、日本株も「買われすぎの上に買われすぎを積み重ねている」と述べてきた。これは企業収益対比での株価分析についてではない。とく5月以降、「東証が低PBR企業に改善を求めているから買い」「日本経済がデフレを脱却し、健全なインフレ状態に移行するから買い」などといった見解を「ネタ」とした株高だったからだ。

筆者は「低PBR改善に向けた日本企業の経営改革はまったく進まない」「日本経済はデフレ状態をずっと脱却できない」などと予想しているわけではない。ただ、そうした構造的な変化は簡単には進まず、かなりの努力と時間を要すると考えているだけだ。

日本株を買い上げた「海外投資家の正体」

ところが、この間、日本株を大いに買い上げた海外投資家は以下の2種類存在した。(1)構造改革が本当に進むかどうかには関心はなく、それを「ネタ」として割り切り、「日本株が上振れするなら、先回りして株価指数先物を買っておこう」という短期筋、(2)「構造改革は短期間に大いに進む」と考えて、日本の現物株を買った「ツーリスト投資家」(日本株投資の経験がほとんどない投資家)」である。これらは、筆者自身の取材などを基に、以前からこのコラムでも指摘してきたとおりだ。

最近は、この点で日本経済新聞も興味深いコラムを掲載していた(8月5日朝刊「スクランブル」欄の「海外勢手じまい売り重荷 企業の緩慢な変化に嫌気」)。同欄では、「脱デフレや東京証券取引所による上場企業のPBR改善要請などを手掛かりに買い進めてきた海外勢が日本株の持ち高を減らす動きが目立つ」と分析しており、そうした日本株売りの背景として、「日本企業が変化に緩慢」であることを理由に挙げている。

この日経の記事を読んで「えっ、海外投資家がPBR改善期待で日本株を大いに買い上げたのは、せいぜい5月以降だよね? 今はまだ3カ月経ったかどうかなのに、海外投資家はそんなに短期間に日本企業が改革をどんどん成し遂げると思ったの?」と、驚いた人も多かったのではないだろうか。

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