高すぎる日米の「株価崩壊」がゆっくり進んでいる 今後の日経平均株価は下落加速の局面を警戒

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まさにその通りだ。日本についてどころか、もしかすると株式・経済・企業分析も熟知しているかどうかも怪しいツーリスト投資家が、ありえない短期間での日本企業の改革期待を勝手に抱いて日本株を大いに買い上げたが、今は「そうした期待は実現しなかった」と勝手に失望して、日本株を売りに回り始めたのだろう。

株価の「崩壊」本格化なら、悲観論加速も

つまり、5月以降の日経平均の急騰をもたらした海外投資家の買いは「幻想」に支えられたもので、これから株価は地に足が着いた妥当な水準へと「正常化」する、と見込むべきだろう。

そうした「仕切り直し」が完了してから、低PBRの改善や経済全体のデフレ脱却がどの程度進んでいくのか、それをじっくり見極めながら長期目線で見ている投資家の買いによって、日本株が徐々に上昇していくものと予想している。

ごく目先の日本株については、中国が日本を含む諸国への団体観光客の訪問を解禁したことや、1ドル=約145円まで進んだ円安などにより、株価の下落が抑えられている。また、何度か日経平均が3万2000円を若干割れる程度で反発してきたため、何となく3万2000円が心理的な支持ラインとなっている。

ただ、株価の下落が本格化し、3万2000円を深く割りこみ始めると、そのこと自体が自律的な崩壊を招き、かえって悲観論が加速する可能性が高いと懸念している。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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