「アメリカ国債格下げは間違いだ」と言い切れるか このままではせっかくの強いカードが台なしだ

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例えば、1990年当時のアメリカにおけるトップ企業は、IBM、GE、エクソン、GM、AT&Tといったところであった。それが今では、アップルにマイクロソフトにアマゾン、アルファベット(グーグル)にエヌビディアである。

30年でトップ企業がすっかり入れ替わっている。これぞアメリカ経済の活力というもので、ちょっとまねができない。たぶん30年後には、まったく新しい企業に入れ替わっていることだろう。

直近のアメリカ経済指標を確認してみよう。4~6月期のGDP成長率(速報値)は年率2.4%成長である。7月の失業率は3.5%である。そして、10日の夜に発表されたばかりのCPI(消費者物価指数)は前年同月比3.3%の上昇であった。見事に3%前後で数字がそろっているではないか。

強靭なアメリカ経済に「フィッチの一撃」

ところが、ここ数年のアメリカで起きたのは以下のような出来事なのである。

① 2020年春~:新型コロナウイルスによるパンデミックでは110万人以上が死亡。文字どおり世界最大の犠牲者を出した。
② 2021年春~:40年ぶりのインフレに陥り、ピーク時には9%台の物価上昇を体験した。しかるにFRB(連邦準備制度理事会)は「物価上昇は一時的なもの」と対応が遅れた。
③ 2022年春~:FRBが利上げを開始。「0.75%の利上げを3回連続!」などという荒業を発揮して、1年と少々で実に5.25%もの金融引き締めとなった。
④ 2023年春~:シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、ファーストリパブリック銀行など、有力地銀が相次いで経営破綻。「21世紀型の取り付け騒ぎ」などと称される。

これだけたくさんの試練にもかかわらず、足元の経済指標は極めて良好である。実際にFRBのジェローム・パウエル議長は、アメリカ経済のソフトランディングに向けて自信をのぞかせている。つまり、景気後退を避けながら、インフレを克服できるというのである。いやもう、なんというレジリエンス(強靭さ)であろうか。

ところがところが、だ。8月1日、格付け会社のフィッチ・レーティングスはアメリカ国債の格付けを「AAA」から「AA+」に格下げした。「なぜ今頃?」ということで、世間の評判は芳しくない。ホワイトハウスは反発しているし、そうそうたるエコノミストたちが疑義を唱えている。

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