自民税調会長が語る「相続・税金の今後の方向性」 「労働慣行変わる中、退職金控除見直しが必要」

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──2024年から、生前贈与の加算期間が3年から7年に延長されるとともに、相続時精算課税に110万円の非課税枠が新設されます。改めてその経緯を教えてください。

高齢化が進む中で、世代間の財産の移転を促していきたいということが根底にある。

今までの制度では、何十億円もの資産を持つ超資産家にとっては低い税率で贈与ができる反面、一般の人は、贈与税よりは相続税で払ったほうが税金としての負担が少なくなるという問題があった。それを解決するために、相続時精算制度を作ったが、暦年課税の非課税枠110万円があり、なかなか使われなかった。そこで、相続時精算制度に年110万円の非課税枠を新設して使いやすくした。

もう1つ、贈与が節税的に使われていることへの対策として、生前贈与の加算期間を7年に延長した。これによって、資産家が早めに贈与をして相続税を減らすということを若干しにくくした。

節税の道具にされることを防ぐ

──節税対策という点では、国税庁がマンションの相続税評価額の算定ルールを見直す方針を打ち出しました。

タワーマンションを中心に、新築マンション価格はたいへん高額になっていて、バブル的要素も加わっている。中古マンションも値段が上がっており、買った値段よりも高く売れる例も出てきた。そうした中、実勢価格よりもそうとう低い値段で評価され、相続税の節税の道具にされることは、防いでいかなければならない。

──2024年度の税制改正大綱では、何が議論の焦点になりそうですか。

2023年度の改正に比べれば、そんなに大きなものがあるわけではない。そういう中で、間違いなく議論しなければいけないのが、法人税関係。GX(グリーントランスフォーメーション=カーボンニュートラルと経済成長の両立を目指す取り組み)や、人への投資を促進するためには、どのような方法があるのか。米国では、GX向けなどかなり大胆な税制改正を決めている。

ある程度参考にしながら、日本の成長を支えるような税制を議論する。さらに、賃上げ促進税制(従業員の給与支給額を前年度より一定以上アップさせた企業や個人事業主を対象に、一定の税額控除を行う制度)についても、来年3月が期限なので、どういう形で引き継ぎ、拡大していくのかの議論が大きな仕事になると思う。

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