労働者を搾取する「A型事業所」のあきれた実態 労基署も機能しない、まさに「貧困ビジネス」

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「(箱折りなど)手先を使った仕事はもともと得意ではありません。ノルマは、正確な個数は覚えていないのですが、どうあがいても私には無理な数でした。だったら私にできるような仕事をさせてくれるとか、あるいはできるように教えてくれるとかすればいいのですが、そういったフォローやサポートは一切ありません」

ジュンヤさんは箱折りがうまくできないという理由でしばらくの間、1人だけ事務所のゴミ捨てや窓ふきをさせられた。「孤独でした。罰を与えられていると感じました」と振り返る。

このほかにも、求人内容が実態と違う、仕事内容を当日の朝に指示される、職員による暴言など問題を上げるとキリがないという。

「求人票に『パソコン操作』とあったので応募したのに、アンケートの入力内容をチェックする仕事が一度あっただけ。実際は単純作業や施設外での仕事ばかりです。駐車場清掃のときは暑さ対策をしたいし、倉庫内は10度以下とかなり寒いので作業用の防寒着や汚れてもいい服を用意したいのに、その日の朝まで仕事内容がわからないので、何も準備できないんです」

ミスの多い利用者に対して職員が「ちゃんと話を聞いてるのか」「真面目にやれ」といった乱暴な言葉を使っているのを聞いたこともあるという。

納得しがたい「労基署の対応」

今年に入り、同じ不満を持つ同僚数人と労働基準監督署に申告をした。ジュンヤさんたちは何より給与に直結する早帰りをなくしてほしいと考え、そのためには実態を裏付けるシフト表が必要だと訴えた。しかし、申告を受けて監査に入った労基署側からは「事業所はシフト表は廃棄したと言っている。シフト表がなければ早帰りの有無は確認できない」という旨の説明をされた。

ジュンヤさんたちは、もともとシフト表は作成されていないと食い下がったが、労基署側の回答は「シフト表がないことはただちに違法とはいえない」。それ以上のことは上部組織に当たる千葉労働局に相談するようにと言われたので足を運んでみたものの、ここでも「労基署に指導できることはない」と門前払いされた。絵に描いたようなたらいまわしである。

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