「"絶望"から立ち上がった人間」は、なぜ強いのか 30代「人生のどん底」で得た"絶対的確信"とは?

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私の場合、何がきっかけで色を取り戻したのかは覚えていません。

でも、これまで述べてきた本や言葉の力も借りながら少しずつ生きる気力を取り戻し、久しぶりに散歩に出かけたある日、突然、世界から色が戻ってきたのです。

陽気がよかったせいか、あるいは太陽の光がいつになくキラキラと輝いていたからなのか、その理由は今でもわかりません。

いずれにしても、モノトーンの世界に一気に色が戻ってくる感覚は感動的であり、そのときに、私が今ここに生きているのは自分一人の力ではなく、何か自分を超越した大きな力によって生かされているのだという強い確信を抱きました。

「科学で実証できないもの」の存在

「確信」という意味で、あれほど強い思いを持ったことは一度もありません。そこに科学的な証明が介在する余地はないのかもしれませんが、その「生かされている」という実感は、私にとっては何物にも代えがたい「真実」でした。

これが、私にとっての「どんなことが起こっても、これだけは本当だと思うこと」です。

そんなものは単なる思い込みだろうと言う人もいるでしょう。そうかもしれません。そうではないかもしれません。でもこれが、今の私が生きるうえでの基軸になっていることだけは確かです。

ここで、アメリカの天文学者で、NASA(アメリカ航空宇宙局)の惑星探査の指導者だったカール・セーガンのベストセラー小説『コンタクト』について紹介しておきたいと思います。

このSF小説は、1997年にジョディ・フォスターの主演で映画化されています。彼女が演じる主人公のエリナー・アロウェイ博士(愛称エリー)は、9歳のときに最愛の父を亡くします。母はすでに、彼女を出産したときに亡くなっていました。

葬儀の際に牧師が、お父さんは神の御心で天に召されたのだよと言ってエリーを慰めるのですが、その存在を実証できるもの以外は一切信じなかった彼女は、その言葉も信じようとしませんでした。

「我々はなぜここにいるのか? 我々はいったい何者なのか?」──この答えを求め続けて大人になったエリーは、プエルトリコにあるアレシボ天文台で、異星人から届く電波の探査に従事します。

その後、予算不足からアレシボ天文台での研究の中断を余儀なくされたエリーでしたが、謎の大富豪ハデンの助けを借りて、ニューメキシコの超大型干渉電波望遠鏡群で探査を再開します。

そして、ついにヴェガ(こと座α星)から届く電波信号を受信し、異星人からのメッセージの解読に成功します。

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