最低賃金「1000円到達」次の目標は7年後に1370円 日本も世界標準「50%・60%ルール」を導入せよ

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最低賃金の引き上げに関しては、以前から日本商工会議所を中心に「失業者が増える」「倒産が増える」などの懸念が示されてきました。しかし最低賃金が1.34倍に上昇したにもかかわらず、倒産件数は増えておらず、失業率は上昇するどころか逆に下がっています。

事実、2012年度に比べて、企業数は15万社、5.5%も増えています。また、生産年齢人口が減っているのにもかかわらず、雇用は57万人も増えて、労働参加率は最高水準を更新しています(法人企業統計)。

このような現象が起きているのは、最低賃金を適切に引き上げることで労働参加率が上昇し、失業率が逆に低下するというモノプソニー理論が示唆するとおりです(参考:日本人の「給料安すぎ問題」はこの理論で解ける)。日本においても、まさに理論どおりの結果が表れているのです。

最低賃金の引き上げに対する「失業者が増える」「倒産が増える」といった反対意見は、まったくデタラメだったのがハッキリしたわけです。日本商工会議所などの引き上げ反対派の人たちには、過去の発言とその後の統計データを検証し、最低賃金に関する考え方を真剣に見直して、今後の発言や見解に関しては、事実に反する感情的な主張や反対意見を控えていただきたいと考えています。

全国一律最低賃金への収束も進んでいる

日本では都道府県ごとに最低賃金が定められていますが、私は2019年から「全国一律の最低賃金に収束させるべきだ」と主張し続けています。また、同年の2月には自由民主党内で「最低賃金一元化推進議員連盟」が設立されました。

最低賃金を導入している国の中で、全国一律の最低賃金を採用しているのは83カ国にのぼります(Pew Research)。アメリカ、中国、インドなど、地域ごとに異なる最低賃金を採用している国もないわけではありませんが、それらの国は国土が広いという共通の特徴があります。日本は国土面積が決して大きいほうではないので、これらの国と同様に地域ごとに異なる最低賃金を設ける必要性は見当たりません。

2006年以降に広がった地方と都心の最低賃金の差は、2019年に最も高い東京と最も低い県との差が、過去最大の223円にまで広がりました。それが2022年には、219円まで縮小しています。また、いちばん高い東京の最低賃金に対するいちばん低い県の最低賃金の比率も、2014年以降、改善し続けています。

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