不動産投資「利回り5%以下」は破綻まっしぐら プロが「危険」と口を揃える5つの理由

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また、不動産投資用に建てられたマンションの場合はそうした物件を保有しているというリスクもある。オーナーがそれぞれ異なるのは分譲マンションと同じだが、大きく違うのは誰もがマンションの管理に関心がなく、管理にお金を払いたくないと思っていること。当然、管理組合が機能しているはずもなく、多くは建物を販売した会社の関係会社の管理会社に任せきりになっていることが多い。

となると管理費、修繕積立金が果たして妥当な額なのか、適切に使われているのかなどの疑問が出てくるが、それを監視する人はいない。

建物と入居者で管理会社が異なる不便さ

賃貸マンションの管理は建物と入居者でそれぞれに異なることがあり、通常であればその場合でも建物を管理している会社は入居者を管理している会社と連携し、入居者情報にもある程度アクセスできるようになっている。ところが、投資用物件の場合には入居者を管理する会社が全戸異なり、建物を管理する会社と情報連携していないこともしばしばだ。

となると、上階で火災が発生、急いで下階入居者にそれを伝えようとしても連絡先が分からない、上下階それぞれの入居者が被害を補填してくれる火災保険に加入しているかどうかも分からないという状況に。

入居者にとっては迷惑なことだし、そこでもし、人命にかかわるようなことが発生した場合には所有者の責任が問われる。そんな物件を保有していることが長い目で得といえるかどうかは難しいところだろう。

以上、表面利回り5%以下の区分所有物件を投資として取得、保有するリスクを説明した。こうした物件を買うことは投資にならないどころか、赤字になる可能性が高いが、だからといって不動産投資自体を否定するものではない。若いうちから投資を始めることは時間をかけて資産を増やせて有利。

ただ、問題は何に、どう投資するか、そのためにどれだけの情報を集め、自ら動くか。不動産投資で成功している人は見る目を持っており、それは養うことができる。近年は不動産価格上昇に伴い、キャピタルゲインが得られる可能性も出ており、そのためにも見る目は大事。間違っても誰かの言葉を鵜呑みにし、妄信して投資することだけは避けたいところだ。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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