「生成AIが仕事奪う」怖がる人に教えたい生存策6つ 変化する時代に求められる人間の「価値」とは?

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ただしこの領域も、孤独を紛らわす会話の相手程度であれば生成AIが対応してくれるでしょう。心理学などのセオリーをすべて学習したAIと対話させることもできますし、ジョークやユーモアも(疑似的に)解します。

人と人が直接会ってお互いの魂や意識を交換するレベルまでのやり取りになって初めて人間の精神性としての価値が生まれます。人と人との触れ合い、それによる存在の相互承認と包摂、癒やしなどは、引退後に自己の存在意義を経済的価値の創出(平たく言えば稼ぐこと)に求めることができなくなった人々にとって重要な価値になっていくと思います。

対話の延長で、時間ができたときに人間が他者と無目的に行う行為として、遊びがあります。

いかに他者と楽しく人間らしく過ごせるかが大切に

20世紀を代表する歴史学者ヨハン・ホイジンガは、人間とは「ホモ・ルーデンス=遊ぶ人」であると定義しました。遊びは文化に先行しており、人類が育んだあらゆる文化は、すべて遊びの中から生まれ、つまり遊びこそが人間活動の本質であると述べています。

動物の骨を利用して作られた4面のサイコロの一種であるアストラガルスは、その歴史は古く、紀元前7000年ごろ(今から9000年前)のトルコの住居跡から発見されています。古代エジプトにおいてもツタンカーメンがすごろくで遊び、古代中国の孔子も「1日中何もしないよりは碁でもやっていたほうがましだ」と、遊びを積極的に肯定しています。

江戸時代には、幇間(太鼓持ち)という、人を遊ばせて楽しませる職業もありました。これからは、機械が業務を代替していく中で生まれた時間を、いかに他者と楽しく人間らしく過ごせるか、が大切になってきます。

いかに人を楽しませるかを知っている人、一緒に遊んで楽しい人、一緒に時間を過ごしたくなる人の価値がこれまで以上に上がっていきます。子供がいろいろな遊びを思いつく才能があり、その遊びに没頭しているなら、勉強などさせずに、その才能を思いきり伸ばしてあげたほうがいいかもしれません。

5.読書モード→探究と俯瞰

生成AIは人間に代わってまったく新しい叡智を生み出す存在というよりも、正確には人間のこれまで培った叡智へのアクセスを飛躍的に改善させる存在、そして反復再現性を持った知的作業を自動化し支援してくれる存在です。

今後一人ひとりの人間がさまざまな集合知にアクセスし、独学で興味関心を持ったテーマについて探究できる可能性は飛躍的に拡張しました。問いを工夫することで、さまざまな学問領域について知ることができます。そして得られた示唆から、書籍を選び独学することができます。

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