3年ぶりに帰国した日本人が驚いた「ヤバい日本」 日本は「海外旅行先」として人気沸騰中だが…

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日本人は優しくて親切で、地震などの災害が起きても暴動は起きないし、忘れ物をしても必ず帰ってくる天国のような国と思い込んでいる外国人は多い。実際、本当にそういう部分もある。しかし世界中が深刻に環境問題を心配し、努力している時に、経済と消費者最優先の日本は、あまりにも遅れていると軽蔑されてしまうのではないかと、心配になるのだ。

いまだに多すぎるプラスチックと過剰包装

環境問題といえば、日本にはいまだにプラスチックがあふれているし、簡易包装を目指すと言いながら、イタリアに暮らし慣れた私から見たら、出羽守だと叱られるかもしれないが、まだまだ過剰包装だらけだと言わざるを得ない。分厚いプラ袋で個包装されたお菓子が、さらに何重ものきれいな箱に入れられている。日本の食材のゴミを捨てるたびにため息が出る。

こう書くと、「そんなことはない。日本だって努力している企業や個人はたくさんいて、とても先進的な取り組みをしている!」という声が聞こえてきそうだ。

確かにその通りで、勉強熱心な日本の企業や人々は、世界でもニュースになるような取り組みをしているケースもある。だがその何倍、何十倍もの企業、団体はいまだに古い体質で、環境問題よりも「お客様にきれいな状態の商品をお届けする」ことを重要視し、プラスチックの使用削減などが実現できていないのでは、という感じがとてもした。そして消費者もそれに慣れてしまっていて、あまり深く考えることなく、そのまま受け入れてしまっているのではないだろうか?

たとえば私がイタリアへ持ち帰るために買い込んだ日本食材の多くはプラスチック製の袋入りで、その背面には透明プラスチックの丈夫そうなプレートが入れてある。プラの使用量多いなあ、いったいこれはなんのために?と考えてみると、お煎餅や乾燥わかめが袋の中でずれたり、壊れたりしないためだとわかる。

商品がきれいに見えて、割れたり型崩れを起こさないことは売るために大事なことかもしれない。顧客の利益をとことん追求し、ていねいなサービスを提供することは日本の素晴らしい美徳だった。だが世界中でプラスチックフリー運動が起きている今、日本だけが変われずにいるように見える。自分ファーストでワガママな国民性のイタリアでさえ、もともとプラスチック製だったものが紙に変わるなど、どんどん変化しているのに。

たとえばスーパーでパックされた肉を買ってみると、肉が触る部分だけ薄いラップのようなもので覆われた紙製の容器に代わっている。イタリア人が朝食によく食べるビスケット、クッキーの類いは個包装されていない大袋入りで、開封後に湿気たり壊れて粉々にならないように工夫するのは、消費者側の問題、という姿勢は以前からだ。

日本が大好きで何度も日本を旅しているイタリアの友人も「日本のお菓子のパッケージなどは本当に素敵で美しいけれど、全然サステイナブルじゃないよね」と残念そうに、しかしズバッと、私に言った。こんなふうに思われて、日本から離れていく人が増える、日本を軽蔑する人が増える。それを私はとても心配しているのだ。

宮本 さやか フードライター

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みやもと さやか / Sayaka Miyamoto

1996年より、イタリア・トリノ在住。イタリア人の夫と娘と暮らしつつ、ライター、コーディネーターとして日本にイタリアの食情報を発信する。一方、イタリア料理教室、日本料理教室、そしてイタリアの人々に正しい日本の食文化を知ってもらうためのフードイベントなども行っている。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」

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