「送料無料」にトラック運転手がモヤる納得の理由 現場のルールは、現場を知らない人が作る

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日本のマクドナルドではかつてメニューに「スマイル¥0」という表記があり、私が高校生くらいのころは、よく周囲の男子が茶化して「スマイルください」とかやっていたが、以前、マックの本場アメリカに住んでいたころ、ためしに店員に「スマイルください」と言ったところ、1ドル札が10枚挟めるほど深いシワが返ってきたのを見て、私はすべてのサービスに無料はないと悟った。

私が「送料無料って言うな」と言い始めたのは、全日本トラック協会が言及するずっと前だったのだが、当時は「言葉狩りだ」という声がほとんどだった。

が、最近になってようやく「送料無料って言葉嫌い」「送料無料じゃないのになんで無料って言ってるんだろう」という声が世間から聞こえてくるように。

なかには「自分の商品、今まで送料無料という言葉を使ってきたが、送料弊社負担に変えました」という人たちからのメッセージもいただくようになった。

この「送料無料」という言葉は、消費者に「運送の仕事は本来必要のない〝コスト〟」という感覚を埋め込ませる。その思い込みは、宅配はもちろん、企業間輸送にも広がり、結果的に物流全体に対する軽視、そして先にも述べた「見えない化」に繫がっていくのだ。

……なお、この原稿も再校という最終段階に入ったところで、国がこの表記の見直しを検討すると発表。業界を見守ってきた身としては非常に嬉しいが、原稿を直すライターとしてはタイミング悪すぎだろと、ニヤニヤしながら慌てて追記している。

運送現場には「生命線」の深夜割引

私は原稿が煮詰まると、時々深夜の高速道路を走ることがある。

深夜の高速道路を走ったことがある人なら知っているかもしれないが、実は高速道路には「深夜割引」という制度がある。

もう少し丁寧に説明すると、2023年6月現在の深夜割引は、車両の種類に関係なく、深夜0時から4時の間に高速道路を〝1秒でも〟利用したすべてのクルマに適用される制度だ。割引率は3割。適用にはETCが搭載されている必要がある。

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