「送料無料」にトラック運転手がモヤる納得の理由 現場のルールは、現場を知らない人が作る

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が、その一方、私は私で自分の書籍が紹介されているECサイトのページを見るたび、人知れず言葉にならないもどかしさと戦っている。「送料無料なんて言葉使うな」と熱弁している書籍が、ご丁寧にその4文字ドドンと連ねて「送料無料」で売られているんだから。

いやほんまこんな皮肉はない。

「送料無料」は本当は「無料」ではない

現在のECサイトの構造上、自分や出版社ではどうすることもできないが、改めて自分の思いを声を大にして言っておく。

いいかい、ECサイト各位。送料無料という言葉はいい加減使うな。

ちょっと考えれば分かることだが、「送料無料」は本当は「無料」ではない。これほど世の中に通販が蔓延るなか、仕事を無料で引き受ける配達員がどこにいる。いいかい各位、「送料無料」とされている商品でも、その代金に送料は含まれているのだ。

にもかかわらず、ECサイトが「送料無料」と表象するのは、なぜなのか。その答えはこれしかない。そのほうが消費者に「お得感」を演出できるからだ。

消費者は非常に単純で、「無料」という言葉に目がない。「送料弊社負担」「送料込み」と、言い方は他にいくらでもあるのにウソまでついて「送料無料」とするのは、運び手を度外視した「顧客至上主義」が世間にあるからだ。

送るのには「カネがかかる」ことをしっかり示さないと、運び手が軽視される。いや、それだけでない。購入した商品を消費者都合で返品しようとする時にこんなことを言ってくるモンスターを生み出すことにも繫がる。「なんで私が送料なんて払うんだ」と。

一番腹が立つのは、この「送料無料」と言っているのが、商品を売っている側であることだ。ECサイトで「送料無料」としているのは、「運ぶ側」じゃないのだ。自分の業界が自分の仕事を「無料」と言うのも腹が立つのに、なんでよりによってよその業界から勝手に「無料でいい」とかされないとあかんのか。

その「無料」とされる彼ら運送のトラックドライバーたちが、充分給料をもらえていて、労働環境がいいのなら1000歩譲って理解しようとも考えるが、現状、彼らの労働環境はお世辞にもいいとは言えない。

「すべてはお客様のために」的風潮がすぎる日本だが、いいかい各位、誰かが犠牲になるサービスなんざ、「サービス」ではないのだ。

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