【男性不妊】保険適用で「無精子症」に広がる選択 不妊検査は夫婦一緒に、精液検査は1回ではダメ

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精液はマスターベーションで採取するが、病院の採精室で採取する方法と自宅で採取した精液を病院に持参する方法がある。

「精液検査を正確に行うために最も大事なことは、検査を最低でも2回、できれば3回、1週間くらいの間隔をあけて複数回行うことです。精子の状態は日によって異なり、同じ人でも複数回実施すると、精子の濃度が10倍くらい違うことも珍しくありません」(白石医師)

精液検査の下限基準値

WHO(世界保健機関)で定められている基準値を下回っている場合、原因を探る検査が必要になる。

「たとえ精液検査の結果が正常であっても、精子のクオリティーが低下しているといった理由で、妊娠に至らないケースも多々あります。このためパートナーの女性が不妊治療していても妊娠に時間がかかっている場合は、精液検査の結果が正常であっても泌尿器科の受診をお勧めします」(白石医師)

精液検査だけでなく、血液検査も重要だ。

血液検査では、ホルモン値の異常がわかる。精子の形成は性ホルモンの影響を大きく受けるため、ホルモン値が異常だと精子は形成されにくくなる。

精子が形成される仕組みは、まず脳の視床下部という場所からGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)が分泌され、視床下部の下にある下垂体に、ホルモンを出すための指令が送られる。すると下垂体からLH(黄体形成ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌され、男性ホルモンのテストステロンの分泌が促され、精子ができる。

「血液検査によってLH、FSH、テストステロンの値が低かった場合、LH、FSHの分泌を促す『クロミフェン』(クロミッド)という飲み薬が効果的で、精子濃度の上昇が期待できます。週に3錠服用すると、2週間程度でホルモン値が正常になり、2~3カ月経つと精液の状態も改善します」(白石医師)

クロミフェンは排卵誘発剤として、以前から女性不妊の治療にも使用されていたが、2022年から男性不妊に対しても健康保険が適用されている。ちなみに、ED(勃起障害)の治療薬である「PDE5阻害薬(バイアグラ、シアリス)」も、男性不妊の治療に限り同年から保険が適用された。

男性不妊で泌尿器科を受診した場合、必ず実施されるのが精巣などの診察だ。

男性不妊の原因となる病気として最も多いのが、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)で、精巣の視診や触診によって見つけることができる。特別な病気ではなく、成人男性の1~2割にあり、精索静脈瘤がある人の約2割が不妊となる。不妊でなければ放置しても問題はない。

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