【男性不妊】精子の質「30代がピーク」という衝撃 質を「低下させる人」「そうでない人」の決定的差

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「精子DNAは突然、断片化するわけではありません。徐々にクオリティーが落ちていき、最終形態として断片化しています。いかにクオリティーを保つかということが、妊娠率を上げることにつながるのです」

この検査は「精子DNA断片化指数(DFI)検査」という。自費(自由診療)となるが、心配な人は一度、検査を受けてもいいかもしれない。

生活習慣病は不妊のリスク?

さて、精子のクオリティーを低下させる要因は年齢だけではない。生活習慣も大事なポイントだ。というのも、近年は欧米の研究報告などから、精子のクオリティーに問題がある状態、つまり造精機能障害と生活習慣病が関連することがわかってきたからだ。

白石医師は、同院の不妊症検査で造精機能障害があった男性と、ブライダルチェック(結婚前などに子どもを作る力を調べること)などで精子が正常だった男性、合計約3000人を比較したところ、高血圧や糖尿病、脂質代謝異常などの生活習慣病を発症している割合が、不妊症患者のほうが倍以上高かったという。

「対象者の平均年齢は35歳だったので、健康診断を受けていない人が多く、この調査によって初めて生活習慣病が見つかった方も少なくありませんでした。特に多かったのが高血圧の患者さんで、降圧剤を服用してもらったところ、半年後には精子の状態が改善していました」(白石医師)

この研究を報告した論文は、2018年にアメリカ生殖医学会発行の雑誌に掲載されている。

ところで、なぜ造精機能障害と生活習慣病が関連するのか。

「それぞれ単独の問題ではないということです。精子を作る精巣(陰嚢)も体の一部ですから、高血圧や糖尿病が悪影響を及ぼしているのでしょう。“生活習慣病の症状の1つが不妊”だと考えることもできるわけです」(白石医師)

高血圧、糖尿病、脂質異常症……。心当たりがある人は、まずは生活習慣の見直しから始めてみてはどうだろうか。

妊娠に支障をきたすのは生活習慣病だけでない。日々の生活が造精機能に影響を及ぼすこともある。

■サウナ

精巣の温度は通常34~35℃に保たれているが、37℃以上になると精子の形成に影響を及ぼす。だからこそ精巣は体の外に出ているので、なるべく熱にさらさないことが望ましい。例えば、今ブームのサウナ。「週に2回、1回15分のサウナに入ることを3カ月間続けると、精子濃度が低下した」という海外の研究報告がある。

白石医師は、「日本人のデータがあるわけではないので、頻度や時間をどの程度にとどめるべきかを示すのが難しい」としつつ、こう話す。

「少なくとも妊活中の男性は、サウナに頻繁に行くのは控えたほうがいいでしょう。サウナの習慣をやめれば、精子の状態は元に戻ります。特に精巣が発達段階にある子どもは、サウナなど精巣が頻繁に高温にさらされるような環境にいくのは、控えたほうがいいでしょう」

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