鉄道車両と自動車、意外に多い「技術的な共通点」 お互いに影響を及ぼしながら発展してきた

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電気自動車と燃料電池自動車は、走行中に大気汚染や地球温暖化の原因となる物質を排出しないため、ZEV(Zero Emission Vehicle:無公害車)とも呼ばれており、次世代を担う自動車として期待されている。

現在の自動車業界では、この「電動化」が開発目標の一つとなっている。欧州を中心に環境問題に対する意識が高まり、地球温暖化の原因として自動車が排出する有害物質(CO2などの温室効果ガス)が問題視されるようになったからだ。とくに2016年に「パリ協定」が発効され、温室効果ガスの排出削減目標が具体的に示されたことは、世界の電気自動車の販売台数を押し上げる大きな要因になった。

鉄道が自動車に与えた影響

次に(2)の「鉄道が自動車に与えた影響」を見てみよう。先ほど述べたように、鉄道は自動車よりも先に「電動化」を実現した。

現在、「電動化」した自動車では、インバータを用いて交流モーターを制御する技術や、コンバータと交流モーターを用いて回生ブレーキを作動させる技術が使われている。これらは、メンテナンスフリーと、エネルギー消費量の節減による航続距離の延長を実現するうえで欠かせない技術となっている。

これらの技術は、鉄道の電車で先に実用化された。このことから、電車で先に実用化されたからこそ、自動車の「電動化」が容易になったと考えられる。

鉄道が自動車よりも先に実現したのは「電動化」だけではない。現在世界の自動車メーカーが実現を目指している「CASE(ケース)」も、鉄道は先に実現している。

ここでいう「CASE」とは、「Connected(接続性)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアとサービス)」「Electric(電動化)」の頭文字をとった言葉である。もともとはドイツのダイムラー(現メルセデス・ベンツ・グループ)が2016年のパリモーターショーで発表した中長期の経営ヴィジョンだったが、他の自動車メーカーが目指すコンセプトと合致していたため、今では世界の自動車業界がこの言葉を使うようになった。

では、「CASE」がどのようにして鉄道で先に実現したのか。それぞれ見ていこう。

最初の「接続性」は、鉄道では列車無線によって実現している。列車無線は、列車の乗務員(運転士や車掌)と指令所の指令員を常時結ぶコミュニケーションツールであり、両者が情報を交換することを可能にしている。

近年は、JR東日本で使われているINTEROS(インテロス)のように、電車などの車両の機器の状態を地上側から遠隔で監視できるシステムも導入されており、より詳細な情報を共有できるようになっている。つまり、電車が自動車におけるコネクティッドカーのように、情報網と常時接続するIoT端末として機能するようになったのだ。

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