ライオンズが本拠地で「手荷物検査」廃止した事情 高精細のカメラと通報アプリでリスク軽減

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東京ドームの場内警備・案内業務はシミズオクト社が請け負っているが、同じシミズオクト社でも他球場ではここまでのことはしない。つまりは「どんな小さな荷物にも必ず手を入れる」は、東京ドームのルールだったということになる。

その東京ドーム、コロナ下では手入れを止めていたが、昨シーズンは復活、従前のオペレーションに戻っていた。ただ、今シーズンは昨シーズンよりは緩和されている印象で、かつてのように「どんな小さな荷物にも必ず手を入れる」オペレーションではなくなっており、明らかに入場待ちの時間は短くなった。

退場時の混雑緩和にフィールド内を開放

だが、ゲーム終了後の退場時の混雑は入場時以上に大きなストレスだ。ベルーナドームでは毎試合フィールド内を開放、西武球場前駅に向かう人を分散する形で混雑緩和を図っている。

他球団にこのマネができるかといえばかなり難しい。天然芝の球場では不可能だし、そもそも自前の球場でないなら所有者の許可が必要だ。自前でも、フィールド上を多くの人が歩けばその分人工芝の痛みは激しくなる。人工芝の痛みはプレーに影響するだけに、選手の理解を得る必要があるうえ、選手の理解以前に構造上難しい場合もある。

ZOZOマリンスタジアムもフィールド開放は行っているが、スタンドからフィールドに直接下りられるベルーナドームとは異なり、いったんスタンドの外へ出て外野から入る形になり、ここでも並んで待つストレスがかかる。

2004年にパ・リーグ球団から始まった球団改革で、座席の快適さやトイレの改修など、観戦環境の改善は大幅に進んだが、何をするにも長時間並ぶストレスの解消はまだ始まったばかり。各球団の創意工夫に期待したい。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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