寿命まで左右する!驚異の「腸内フローラ」 腹時計が乱れると、万病を引き起こす

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腸内細菌の働きには、以下の5つの作用があることが知られています。まず、①腸内細菌は病原体の体内侵入に際して、それを排除するように働きます。②私たちの体は食物繊維などを消化する能力はありませんが、腸内細菌がそれを消化してくれます。③ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンKなどのビタミン類も腸内細菌が作ってくれています。

さらに、④腸内細菌は幸せ物質であるドーパミンやセロトニンを合成し、その前駆体を脳に送っています。そして⑤免疫力のおよそ70%が腸内細菌と腸粘膜細胞との共同作業で作られていると言います。

腸が原因とされる病気が、脳から心臓、そして関節まであらゆる部位に及ぶとされているのは、このような腸内細菌の働きがあるからです。まさに腸の不調、つまり「腸内フローラ」のバランスを崩すと、万病を引き起こすというわけです。逆に「腸内フローラ」のバランスを整え、腸を健全にすれば病気を予防し、健康になり、寿命を延ばすことができるのです。

日本人の腸内細菌数が減っている

日本人の腸内細菌数は戦前に比べて、とても少なくなっています。「腸内フローラ」のバランスも崩れていて、日本人の腸年齢も老化してきています。腸内細菌のエサである野菜や豆類、食物繊維の摂取量が減ってきたからです。

日本人の野菜消費量は1985年、1人当たり年間110.8キログラム、そして1999年には102.8キログラムまで低下しています。食物繊維の摂取状況は、戦前の約3分の1の量にまで減少しています。

日本人の腸内細菌が減少した要因は、このほかにもいろいろ考えられます。添加物が使われている食品を摂取する機会が増加したことや、食生活の乱れ、ストレスの多い現代の社会環境も関係していると思われます。

腸内細菌が減少し、腸内フローラのバランスが崩れることによって、起こる病気はたくさんあります。たとえば免疫力が低下し、アトピーやぜん息、花粉症などのアレルギー性疾患が起こってきます。また、がんの発生を促します。最近、増えてきた潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患も発生しやすくなります。

ドーパミンやセロトニンなどの「幸せ物質」を脳に送れなくなり、うつ病をはじめとするいろいろな心の病気も起こってきます。そればかりでなく、肥満や糖尿病、認知症や自閉症まで、「腸内フローラ」の乱れが関係していることが最近の研究でわかっています。

なぜ、こんなに多くの病気が「腸内フローラ」のバランスの乱れによって起こってくるのでしょうか。その理由は、腸内細菌の働きが低下することに加え、「腸内フローラ」が体内時計と連動しているからです。

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