DXですぐ「システムの話」をする人が危険な理由 デジタル化の「目的と手段」を取り違える末路
企業のデジタル化は多くの日本企業にとって喫緊の課題である。だが前のめりになって「新しいシステムを入れる」「AIを導入する」と考えてしまうのは危険だ。なぜならDXは目的ではなく手段だからだ。これを取り違えると、手間やコストがかさむだけで、何ら改善されないという事態にも陥る。IGPIビジネスアナリティクス&インテリジェンスのディレクター、上田剛氏の新刊『実務担当者のためのビジネスプロセスDX実装ガイドブック』(東洋経済新報社)から、DXに対する正しい向き合い方を紹介する。
DXを検討・実装する際、常に気を付けなくてはいけない、重要な留意点がある。DXは「目的」ではなく、「手段の一部」ということだ。
DXとは「ビジネスをデジタルで変えること」であり、その目的は、ビジネス課題を解決することだ。DXをすることが目的ではなく、DXはあくまでも複数ある手段の一つである。システムやAIを導入することがありきではない。
非常に当たり前のことなので、最初のうちは目的から外れることはない。それがDXを推進しているうちに、いつの間にか目的と手段がすり替わってしまうことがある。なぜそんなことが起こるのか? 要因は二つある。
なぜ目的と手段を混同してしまうのか
一つ目の要因は、現場担当者が大元のビジネス課題を把握していない、ということだ。
担当者のレイヤーが変わると、手段が目的になりやすい。経営陣が目的を定め、現場が手段を考えて実行する。職位のレイヤーが下りてくるに従い、部長の手段が課長の目的、課長の手段が係長の目的、というように、自然と目的と手段がすり替わる。下位レイヤーの担当者にとって、より上位の目的は、伝えてもらわないと分かりようがない。
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