【産業天気図・化学】主力プラントが被災、企業・家計の心理悪化も響き軟調な展開へ

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景況感の展望
11年4月~9月 10月~12年3月

2011年3月期は業績好調で推移した化学業界の11年4~9月(11年度前半)は、一転して主要企業で減収減益が相次ぐ「下向き」の景況感となりそうだ。

東日本大震災により主要企業の大型プラントが被災。直接的な生産停止が長引くことに加えて、部品供給網であるサプライ・チェーンの寸断や電力不足などに伴う生産活動の停滞、企業や家計の心理悪化などによる国内景気の減速も足を引っ張る。

一方、11年度後半(11年10月~12年3月)は、中国をはじめとする新興国に牽引された世界経済の拡大が続く中で、サプライ・チェーンや国内景気の復調とともに化学業界の景況感も持ち直しそうだが、好調だった前年同期を上回る力強い回復を期待するのも難しく「下向き」が続きそうだ。

3月11日に起きた震災で化学業界が受けた直接的な被害のうち、最も大きかったのが三菱ケミカルホールディングス傘下の三菱化学を筆頭とする鹿島コンビナート(茨城県神栖市)だ。太平洋沿岸に面する鹿島コンビナートは、地震の揺れに加えて押し寄せた津波によって、とくに港湾施設や蒸気、工業用水などのユーティリティ(用役設備)などが損傷した。三菱化学だけでなく信越化学工業、三井化学、JSR、クラレ、カネカ、三菱ガス化学、旭硝子などコンビナートに属する化成品メーカーが軒並み操業停止を余儀なくされた。

しかも鹿島コンビナートの機能停止は、少なくとも5月下旬ごろまで続く可能性がある。石油から抽出されるナフサ(粗製ガソリン)をもとに、エチレンやプロピレンなどの石油化学製品の基礎原料をパイプラインで化成品メーカーに送る”心臓部”の役割を果たす三菱化学のエチレンプラントは、3月23日時点で「稼働再開に最短でも2カ月以上を要する」との見通しを発表している。三菱化学のエチレンプラントが動かない間は、各課製品メーカーの工場でそれぞれ復旧が進んだとしても、原料の安定調達がままならず、本格的な生産再開に踏み出せない。

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