「昼顔」から9年、「あなして」が注目を集める必然 なぜ今、セックスレスドラマが量産されるのか

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また、三竿プロデューサーは、「2組の夫婦、4人がそれぞれに悩みがあり、思いがあり、もがき苦しんでいる。誰一人として本当の意味で悪者はいないこの作品にほれ込みました」ともコメントしていました。その言葉通り当作は、「セックスレスされる側」のみちと誠、「セックスレスする側」の陽一と楓の心理が丁寧に描かれています。

不倫を扱ったドラマは毎クール2~3本ペースで放送されていますが、その多くは不倫そのものやベッドシーン、された側の復讐などの刺激的な描写にスポットを当てた作品。ここまでセックスレスにスポットを当て、「する側」「される側」の心理を丁寧に描いたものはほとんどありません。

名監督の映像美で生々しさを中和

たとえば、みちの「女としての魅力が足りないのか。性欲はあるのになぜ?」「またはぐらかされた。もう2年もしていないのに」「さすがにそろそろ子どもがほしい」、陽一の「恋人じゃなくて家族だから」「セックスしなくてもいい夫婦関係を築けていると思う」「自分はEDなのかもしれない」、誠の「家事などをこんなに頑張って支えてきたのに」「これで夫婦と言えるのか。さすがにもう我慢できない」、楓の「仕事で疲れているから」「今がキャリアの正念場で子どもができたら困る」。

周りの人々から見たら、うらやましいほどの仲良し夫婦が実はセックスレスで、心がすれちがい、体にふれ合わないから、ふとしたきっかけで不倫がはじまってしまった。自然にも見えるこの流れを丁寧に実写化したことで、より「誰にでも起こりうることかもしれない」と感じさせています。

しかし、セックスレスを「される側」「する側」の心理を実写化することは、ある意味でベッドシーン以上に生々しさを感じさせやすいもの。実際のところ、原作を読んだ人々から「漫画だから見やすかったのかもしれない」という声があがる難しさがありますが、そんな生々しさをチーフ演出の西谷弘監督が洗練された映像で中和させています。

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