ズボラ人間だった私が得た「豊かな暮らし」のコツ ふきん1枚でスッキリ、暮らし縮小化のススメ

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先ほど、つい「野菜が育つ」と簡単に書いたが、実は、これがまったく簡単でもなんでもない。野菜というのは人工的に作られたものゆえ「強い植物」ではないらしく、案外すぐ病気になったり虫の襲撃にあえなくやられたりする。とくに「実がなる」野菜(豆やトマトやピーマンなど)は、肝心の実がなる段階で大変なエネルギーを使うらしく、お約束のように一気に枯れたり病気になったりするのであった。なので今ではハーブや葉野菜、ミニサイズの根菜をもっぱら育てている。

農家さま今日もありがとうございます

で、何が言いたいのかというとですね、こうしてささやかでも自分で野菜を育てていると「食べものを作る」ことがいかに大変かが大変よくわかるのだ。八百屋で粒ぞろいの美しいミニトマトが200円とかで売られていると、思わず目をむく。農家さま今日もありがとうございます、決して無駄にせず大切に食べさせていただきますという殊勝な気持ちが自然に湧いてくる。かくしてわが家はフードロスという単語とは無縁。無駄な食材費を使うこともなくなった。

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そして最後になりますが、さらなる奇跡についてもぜひ書いておきたい。それは、「ゴミが立派な資源になる」ことのもたらす精神的効能である。そう世の中には本当はゴミなんてないのだ。すべてはうまく循環さえすれば、次世代に立派に命が受け継がれていくのである。そう考えると、自分もきっと社会のゴミなんかじゃないはずと思えてくる。人の目や評価を気にする必要なんてない。ただただ一生懸命生きればいいのだ。

それが、私にとってはいちばん大きなことだったかもしれない。

ということで、ちょっとした道具で誰でも簡単にできて、さらに人生に大きな奇跡を次々引き起こす楽しい生ゴミ堆肥作り。1人でも多くの方に是非ともオススメしたい家事であります(土囊袋を使った堆肥づくりについては門田幸代さんの『新カドタ式 生ゴミでカンタン土づくり』が詳しい)。

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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