「人生終わった」から抜け出す人が口にする一言 がん患者の心を救う「ユー・モア」の本当の意味

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悩む男性
がんになって本当に怖いことは?(写真:プラナ/PIXTA)
病理医として2000人を超える患者のがんを見てきた経験を生かし、2008年から「がん哲学外来」を無償で開いて、がんにまつわる人生哲学について、5000人以上の患者やその家族と対話を続けてきた樋野興夫氏。患者と家族の苦悩を独自の哲学で包みながら描いた『もしも突然、がんを告知されたとしたら。』を上梓した樋野医師が、がん患者を孤独の闇に突き落とす「なぜ?」と「人生終わった」という心理的な罠から脱出するための魔法の言葉を紹介する。

「なぜ?」の答えは医師でもわからない

「なぜ、私ががんにならなきゃいけないの?」

初めてがんになった人は、みなさんがショックを受けて、どうしてもそう思ってしまいます。

確かにこれは無理もない。現代社会において、がんは非常に身近な病気で、2人に1人はがんになります。つまり、がんになるもならないもほぼ同じ確率なんですね。

もしも突然、がんを告知されたとしたら。
『もしも突然、がんを告知されたとしたら。』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

同じ確率であるにもかかわらず、がんになるのとならないのとでは大違いです。がんになった人は「もうすぐ死ぬのではないか」という恐怖にさいなまれるのに対し、ならない人はそんな恐怖を味わうことがない。これは非常に理不尽で不公平に思えます。それで、

「なぜ、私だけひどい目にあわされるの?」

と、思ってしまうんです。

でも、これはやめたほうがいい。なぜなら、この「なぜ?」の答えは、誰にもわからないからです。

確かに、医学的な研究により、がんになりやすい生活習慣や遺伝的素因はわかってきています。けれど、そうした習慣や遺伝のある人が必ずがんになるわけではありません。逆に、そうした習慣も遺伝もないのにがんになる人もいます。

ということは、がんになる人とならない人、この両者を分ける決定的な要素は何なのか、残念ながら、現代の医学でもまだわかっていないということなんです。

ですから、「なぜ私ががんに?」と問われても、がんを専門とする医師でさえ「○○だから」と明解に合理的に答えることは不可能なんです。

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