池上彰が斬る!「米大統領を決めるのは誰か」 高まり続けるヒスパニックの影響力

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今の安倍政権は、閣僚の不規則発言などを除くと、大きな問題を抱えてはいません。ただ、これは政治にかぎった話ではありませんが 失敗は、得てして得意分野で起きがちです。民主党がだらしない今だからこそ、安倍政権に傲慢さが見えてくると、安保問題など絶対的な自信を持っている分野で、たとえば公明党との間に亀裂が入るなど、高ころびする恐れはないのか、それが少し心配です。1強の割に、安定感がないのです。

独裁者への道を歩みつつあるトルコ大統領の野望

最後に、私が今、最も注目している国についてお話ししましょう。それは、トルコです。

アラブ世界の混乱の中、トルコのエルドアン大統領は憲法を改正し、独裁者への道を歩みつつあります。その道の先にあるのは、「オスマン帝国の栄光再び」という野望です。

トルコのエルドアン大統領(写真:AP/アフロ)

こういった野望を抱えているのはトルコにかぎりません。中国が東シナ海についていろいろと言っているのは、 「明の時代の栄光再び」という思いがあるからですし、ISISも「イスラム帝国の栄光再び」と考えています。これからは、そういった野望のぶつかり合う世界になるかもしれません。

ただ、トルコの場合は長年、政教分離を国是としていて、現在のように急激なイスラム化が進んだときには、軍がクーデターを起こして、それを阻止してきました。

はたして今回、トルコ軍は容認するのか。目が離せません。

(構成:片瀬京子)

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶應義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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