ロボットスーツが変える建設現場の未来 大和ハウスとサイバーダインが実証実験へ
建設業界では人手不足に加え、職方の高齢化が深刻な状況となっている。2008年のリーマンショックを経て、建設業界の就業者数はピークだった1997年と比べると、280万人以上も減っている。さらに55歳以上の高齢者の割合は4割弱にも達しており、このままでは近い将来、建設現場を維持することができないという事態も起こりうる。
その解決への道筋のひとつとして大和ハウス工業が打ち出したのが、建設現場への装着型ロボットスーツの導入だ。
投入するのは筑波大学発のベンチャー、サイバーダインが開発・製造した「ロボットスーツHAL作業支援用(腰タイプ)」。脳から筋肉に送られる微弱な電量を小型のセンサーが感知し、モーターで腰の屈伸運動を補助する仕組みで、作業負荷を最大4割は軽減できるという。1回の充電で約180分、3時間の作業が可能となる。
人手が必要な重労働を補助
たとえば、マンションのコンクリート打ちの現場などでは、1袋25キロもあるセメント袋が累計で何百袋と運ばれてくる。だが、トラックから最後のワンマイルを運ぶのは依然として人手に頼っている。かがんで持ち上げ、運ぶ。この作業の繰り返しによる腰への負担は、並大抵なものではない。このような重労働が高齢者の早期リタイアにつながるばかりではなく、若年層も建設業から遠ざける原因となる。それをこのロボットスーツを使って食い止めようという試みだ。
実は大和ハウスとサイバーダインとの出会いは、いまから10年ほど前にさかのぼる。ロボットの開発費が足りず、出資者を求め東奔西走していたサイバーダインのCEO、山海嘉之・筑波大学教授が、大和ハウスの樋口武男会長に面会したのは2006年。樋口会長は、創業者の故石橋信夫氏の薫陶を受け、常日頃から「何をやったら儲かるかではなく、人の役に立ち、喜んでもらえるような事業を考えろ」と檄を飛ばしていた。それが山海教授の口から「人の役に立つものを作りたい」との言葉が出たのを聞いて、即座に経営会議に出資を提案したのだという。
2007年2月に第三者割当増資を初めて引き受けた後、大和ハウス工業はこれまでに約40億円を出資。今では筆頭株主の山海社長に次ぐ2位株主だ。だが、上場前に引き受けた株式は議決権のないA種株に限るなど、カネは出すが口は出さないというスタンスは不変。「あくまでサイバーダインの販売代理店」という姿勢を崩さない。
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