「試合で借金、負ければ終わり」ボクシングの残酷 世界戦はギャンブル、自宅を担保にする会長も

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中小ジムの運営の健全化を目指しながら、ボクシング業界全体の底上げを実行する――。それが亀田さんが掲げる改革だが、ボクシング人気を再興させることも大きな野望だ。内山さんも、「RIZINやK-1は、若い世代にも人気がある。ボクシングは、井上尚弥や村田諒太の名前は知っていても、若い世代が足を運ぶというところまではいたっていない」と、現状を嘆く。

「横綱が不在でも大相撲を見に行く人はたくさんいる。大相撲ファンがいるんです。でも、ボクシングは選手や話題ありき。ボクシングのファンを増やしたい。そのための間口はたくさんあっていいと思う。僕らがハーフタイムショーを設けているのもその一つ」(亀田さん)

かつて、世間を騒がす「亀田家」に関心を抱いて、亀田さんのボクシングを見ていたという人は多いのではないか? 当事者だからこそ、その言葉には説得力がある。

「PRや宣伝力が足りないと思いますね。昔、『ボクシングの日』というイベントが開催されて、僕も参加したんですけど、直前までまったく知らされていなかった(苦笑)」(内山さん)

「ありましたね。5月に後楽園ホールでやりました。往年の名チャンピオンも一堂に会するイベントでしたよね」(亀田さん)

「そういうイベントをうまく宣伝できていない。そうそうたるメンバーが集まっているのに、もったいない。外に発信するという意識は、もっとあっていい」(内山さん)

SNSで選手自身もアピール

そうした魅力向上を打ち出すために、亀田さんは、過去に『亀田興毅に勝ったら1000万円』などの企画でタッグを組んだABEMAとともに二人三脚で歩む。16日に行われる『3150FIGHT vol.5 〜東京を殴りにいこうか!〜』は、ABEMAで無料生放送されることも決定している。

『3150FIGHT』では、デビューまもない若手選手であっても、記者との質疑応答を行い、最後に「ABEMAを見ている方に」と振られ、カメラに向かってメッセージを残すことが定着化している。

「今の時代はSNSで簡単に発信できる。ツイッター、インスタグラム、YouTube、なんでも自分で発信できる恵まれた時代だと思います。僕の現役時代に同じことができたら、きっと毎日の練習風景をインスタのストーリーにアップしているでしょうね。試合以外の場所でも認知してもらえるきっかけがたくさんある。そういうことを選手自身もどんどんしていくことが、ボクシングを盛り上げていく上で欠かせないと思います」(内山さん)

その話を隣で聞いていた亀田さんは、こう締める。

「自己プロデュースは大事。選手にはどんどん自分を発信してほしい。その上で、ボクシングのすごいところは、単に人気があるだけでは、上に行けないところです。新聞の全国紙を見てください。K-1や総合格闘技は載らないけど、ボクシングのタイトルマッチは載るんです。オリンピック競技なんです。ボクシングは、エンタメでもなければ格闘技イベントでもない。その格を落としてはいけない。そこだけはきちんと意識して仕掛けていきます」

我妻 弘崇 フリーライター

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あづま ひろたか / Hirotaka Aduma

1980年北海道帯広市生まれ。東京都目黒区で育つ。日本大学文理学部国文学科在学中に、東京NSC5期生として芸人活動を開始する。2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経てフリーライターとなる。現在は、雑誌・WEB媒体等で幅広い執筆活動を展開している。著書に『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー ビジネス力を鍛える弾丸海外旅行のすすめ』(ともに星海社)など。

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