「試合で借金、負ければ終わり」ボクシングの残酷 世界戦はギャンブル、自宅を担保にする会長も

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その一方で、大手ジムに移籍するメリットも多分にあると、両者は認める。

「ボクシングで一番何が強くなるかというと、やはりスパーリングです。練習試合みたいなものですから、どれだけ強い選手とスパーリングするかはとても大事」(亀田さん)

「小さいジムだとそうはいかない。強くなるには環境が必要です。層の厚い大手ジムは強くなれる環境が整っている。こうした問題を興毅はどうやって解決していくつもり?」(内山さん)

「出稽古ではないですが、実力のある選手がスパーリングしやすいネットワークを作ることはできないかと考えています。地元のジムに残ったまま強くなれば、その地域は盛り上がる。町おこしや地域創生といったことに地元ボクサーが関与できたらいいなと。ただ、考えれば考えるほど、ボクシングは難しいなぁと考えさせられます」(亀田さん)

「わかる。自分も地元を盛り上げたいという気持ちがあったけど、強くなることを考えると、大きなジムの方がいい。のちに、『かすかべ親善大使』に委嘱されたことで、地元に貢献できたときはうれしかったけど、移籍しないでも強くなれて、地元に貢献できる――そんなことができたらすごいことだと思う」(内山さん)

3150FIGHT 内山高志
「大手ジムのほうが練習環境は整っている」と語る内山高志さん(撮影:尾形文繁)

実は、過去にプラットフォーム構想を目指したものの、「自ら選手を育てず、人の選手を使って金儲けをするな」などと釘を刺され、とん挫したケースもあった。亀田さんのプラットフォーム構想の課題を挙げるとしたら、こうした横やりをいかに回避するかというところだが、「興毅は、自分たちでスポンサー集めに奔走している。さらにABEMAさんのバックアップも心強い。多くのジムが『うちの選手を出したい』と言ってくるのではないか」と、内山さんは分析する。

たとえば、昨年8月に行われた『3150FIGHT vol.3』は、 世界戦が行われないにもかかわらず32社という規格外の数のスポンサーを集めた。豊富な資金力があるからこそプラットフォーム構想を打ち出せるわけだが、当の本人は「今は先行投資のとき。僕らの儲けはぜんぜんありません」と打ち明ける。

「ボクシングと一緒なんです。ある程度まで行けば、ちょっと距離を取って攻め方を変えたり、カウンターを狙ったりできるけど、今はとにかくノーガードで打ち合いに行くしかない。今は前に行くしかないんです」(亀田さん)

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