「いい睡眠」「悪い睡眠」脳内で起きる圧倒的な違い 翌日のパフォーマンスが大きく違う納得理由

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また、睡眠と記憶については、さらに興味深い事実もあります。「睡眠はイヤな記憶も洗い流してくれる」──深いノンレム睡眠の間にたいせつな記憶は長期記憶へ移されますが、他方、ノンレム睡眠中の脳の中では、「記憶の消去」も行われているのです。

人間は、「記憶の消去」がなければ頭を切り換えられません。今日起こった心に障るイヤなことや、人生における苦しい体験などの記憶は、ほとんどの場合、時間とともに薄れていきますが、これは、ノンレム睡眠中に記憶の部分的な消去が行われるからなのです。

イヤなことがあった日こそ、憂さ晴らしの方法を模索するより、さっさと眠るにかぎります。ネガティブな感情を引きずらないすっきりした目覚めは、スマートな脳の働きを呼び起こしてくれるでしょう。

脳の不用物を洗い流し、パフォーマンスを上げる

睡眠は「記憶の消去」にもかかわり、イヤな記憶を忘れさせてくれるだけではなく、文字通り、脳の中の不要物を「洗い流して」脳のパフォーマンスを上げてくれる──そんな仕組みが近年、世界中の研究者たちの大きな注目を集めています。

たとえ肉体労働をしなくても脳を使えば、活動の過程で有害な老廃物などのゴミが大量に生じます。代表的なものがアミロイドβというたんぱく質で、脳の働きを衰えさせ、認知症の原因になるとも考えられているこの「脳のゴミ」を洗い流すしくみが、「グリンパティック・システム」。いわば、脳内のデトックスシステムなのです。

アミロイドβのもとになる前駆体は、細胞の膜表面に存在し神経の成長と修復などの機能を持つたんぱく質で、役目を終えれば断片化して排泄されます。そのなかでもとくに凝集しやすい断片が脳内に沈着し、他の病態とも合わせて脳に障害をもたらし、認知症の原因にもなると考えられています。

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