東武伊勢崎線の「先のほう」には何があるのか 特急は1日に上下1本、昼間は各停が健気に走る

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「上下線の間に中線があって、貨物列車をそこに停めておいて旅客列車を行き来させていたのではないかなと。木崎駅も同じで、どちらも構内が広くて貨物を扱っていた時代がしのばれます」(小此木さん)

境町駅は、平成の大合併で伊勢崎市などと合併して消滅した旧佐波郡境町のターミナル。かつてこの一帯では両毛地域らしく繭の生産が盛んだったという。境町駅周辺にも繭を保管するレンガ造りの倉庫が並んでいた。往年の貨物列車は、そうした繭や生糸などを運んだのかもしれない。

ちなみに小此木さん、伊勢崎出身で親戚が境町に住んでいたため、子どもの頃に伊勢崎線に乗って境町駅を訪れたことが何度もあったという。そのときの思い出は……。

「いまは上下線のホームは跨線橋で結ばれていますが、当時は跨線橋ではなくて線路を渡っていったんですよね。電車から降りると、停まっている電車の目の前を歩いて渡って。近くで見る電車がそのときはおっかなくて、母親にくっついて歩いていたのを覚えています。その頃は線路を渡るお客さんのために、係員もいたんですよ」(小此木さん)

境町駅は跨線橋で上下線が結ばれるが、木崎駅は構内踏切で相対式ホームを行き来する。伊勢崎線は境町―世良田間に太田市と伊勢崎市の境界があり、世良田駅の1つ東側の駅が木崎駅。古い駅舎であることも境町駅とよく似ている。駅の周辺には住宅地が広がっているほか、駅舎とは反対側の北側にはサッポロビールの工場が鎮座する。

古めかしい木造駅舎

いまではほとんど意味がなさそうな、木崎駅の広い構内と長いホームを歩いてみる。その東側の端っこからビール工場側を見ると、どうやらかつてはビール工場の貨物輸送も担っていたのだろうかと思わせる構造が目に留まる。線路と工場側の間の敷地にいくらか余裕があることに加え、線路に接する形で工場の荷さばき場が設けられているのだ。

「このビール工場はかつて宝酒造の工場で、はっきりしたことはわかりませんが、貨物もやっていたと思いますよ。駅舎は屋根がすごく高くて、中に入ると吊り天井になっていて、なかなか古めかしい構造になっています」(小此木さん)

なお、1910年の開業当初からの駅舎という話もあるが、それを確認できるものは何も残っていないそうだ。かつては「徳川河岸線」と呼ぶ貨物線も延びていたという。

木崎駅の駅舎
時代を感じさせる木崎駅の駅舎(撮影:鼠入昌史)

木崎駅から東へは、細谷駅という高校や大学などの最寄り駅を間に挟んで東毛地域の中心ターミナル・太田駅。ご存じSUBARUの企業城下町で、太田駅やそのお隣、小泉線竜舞駅近くなどにSUBARUの工場があちこちに点在している。

竜舞駅近くのSUBARUの工場は、もともと中島飛行機の飛行場だったとか。最近ではバスケットボール男子Bリーグ1部に所属する群馬クレインサンダーズのホームアリーナも建設されるなど、今後利用者の増加が期待される駅の1つだ。

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