高い?無印良品低迷、苦闘する"らしさ追求"の呪縛 金井政明会長が「難しさを感じている」と語る原因

✎ 1〜 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 最新
拡大
縮小
創業当初のキャッチコピーは「わけあって、安い。」。それが今や「高い」という声もある無印良品(撮影:今井康一)
企業を取り巻く環境が激変する中、経営の大きなよりどころとなるのが、その企業の個性や独自性といった、いわゆる「らしさ」です。ただ、その企業の「らしさ」は感覚的に養われていることが多く、実は社員でも言葉にして説明するのが難しいケースがあります。
いったい「らしさ」とは何なのか、それをどうやって担保しているのか。ブランドビジネスに精通するジャーナリストの川島蓉子さんが迫る連載の第9回は無印良品を展開する「良品計画」に迫ります。
著者フォローをすると、川島さんの新しい記事が公開されたときにお知らせメールが届きます。

消費社会へのアンチテーゼとして生まれた無印良品

無印良品が世に生まれ出たのは1980年のこと。西友のプライベートブランドとして、家庭用品9品目、食品31品目、計40品目からスタートした。

当時は「シャネル」や「エルメス」といったラグジュアリーブランドをはじめ、数々のデザイナーズブランドが仰ぎ見られていた時代。“人と違うこと=個性の表現”という価値軸のもと、差別化を競う消費が繰り広げられていた。

そんな時代に、あえて「無印」と記すことで、ブランドを否定した「無印良品」は、ある種の驚きとともに受け止められた。非日常における贅沢さや“感性”による価値を訴える商品が氾濫する中、「日用品における合理性を見直す」という視点も新鮮だった。

バブルに向かってさまざまな“モノの消費”が盛り上がっていく中、そういう社会や文化に対するアンチテーゼだった。高級であること、著名であること、斬新であること、トレンドであることなどをうたい、新しい商品を生み出しては“消費”していく――都会を中心とした“消費の大車輪”が回っていくことへの疑問を呈したのだ。

掲げられたコンセプトは「わけあって、安い。」。「わけ」とは、「素材の選択(ふだん見過ごしがちな素材を見直し、調達する)」「工程の点検(生産するプロセスにおける無駄を省く)」「包装の簡素化(過剰包装を避けて簡略化する)」に根ざしていた。

次ページ足元の業績は低迷
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT