ユニクロが大幅賃上げできる「生産性」のカラクリ 同業他社と異なる人員配置の「しくみ」とは?

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ユニクロ賃上げのカラクリをひも解きます(写真:Ryuji/PIXTA)
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インフレ率以上の賃上げが求められる中、国内アパレル最大手のファーストリテイリングが、国内ユニクロ事業について、役職によって数%から最大40%の賃上げをする方針を今年1月に発表した。人件費が15%増えることになる同社の賃上げの決断が各メディアで話題となった。

国内のアパレル小売業の中では高水準の給与と言われる同社だが、社内事情としては、海外の給与水準に比べて、国内の給与水準が低かったことを是正するのが第一の目的という。

同社がこれまで業界高水準の給与を支払い、さらに、数%どころか、15%の賃上げができる理由と狙いを同社および上場する同業他社の決算書の数字から探ってみたい。

ユニクロの生産性はかなり高い

まず、前提条件として、賃上げを行うには、「原資」が必要であることは言うまでもない。

同社の賃上げの原資の1つめは、同社の生産性の高さにある。小売業において生産性を表す数値は、「人時生産性」、つまり従業員人が1時間当たりにどれだけの付加価値(小売業で言えば粗利高)を稼ぐかだ。

同社では、毎年決算時にリリースするFACTBOOK(ファクトブック)の中の「国内ユニクロ事業主要経営指標」において「1人当たりの売上高(年間)」を開示しているが、そこから計算する人時売上高は、過去5年を見ると、おおよそ1万5000円前後である(人時売上高は1人当たりの年間売上高を法定年間労働時間である2000時間で割ったもの)。

これに、同社が決算説明会資料で開示している国内ユニクロ事業の粗利率(ロイヤルティ差引後)49%をかけると、人時生産性は7000円を超える。人時生産性が6000円を超えれば優秀と言われる小売業界において、同社の生産性は高水準だ。

次ページユニクロの「人時売上高と人時生産性」の推移は安定
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