ユニクロが大幅賃上げできる「生産性」のカラクリ 同業他社と異なる人員配置の「しくみ」とは?

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また、Eコマースの生産性が店舗よりも高いのであれば、Eコマースのシェア拡大も生産性の向上につながるだろう。

グラフはユニクロ国内事業の売上高と店舗とECの売上比率の推移である。

アパレルにおいては、店舗での知名度や、商品が確認できる場としての店舗があってこそのEC売り上げであるが、倉庫の自動化によってEコマースを効率化し、店舗受け取りの推奨によって配送料負担を軽減できれば、全国の顧客を対象とするEコマースビジネスは店舗よりも生産性が高くなるはずだ。ユニクロにとっては、EC売上比率の向上も1人当たりの生産性アップに寄与するだろう。

グローバル人材育成に必要なこと

このような、さまざまな切り口によって、国内事業をさらに生産性高く運営し、1人当たりの給与を上げ、海外との給与水準が同等になれば、日本の人員の中から、海外ユニクロ事業に出ていく人員を増やすことができるようになるだろう。また、海外から、日本に来ることができる人員も増やすことができれば、グローバル人材育成も活性化することだろう。

小売業経営者の方にとって、ユニクロの賃上げ問題は他人事ではない。賃上げを考える時、ユニクロはなぜ生産性が高いのか?に学ぶことが重要だ。まずは、業務の標準化を行うことによって、作業を最小限に済ませ、従業員を、より売上高が高まる業務に集中できるようにすることで、「生産性」を高めることに取り組む必要がある。賃上げは、生産性が上がらなければできない、原資をつくらなければ、無い袖は振れないのだ。

齊藤 孝浩 ファッション流通コンサルタント

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さいとう・たかひろ

総合商社でのグローバルな商品調達から、アパレル小売業でのローカルなチェーンストア経営まで、ファッション業界で豊富な実務経験を持つ、ファッション流通在庫最適化コンサルタント 。 国内外のファッション業界や企業の動向やサプライチェーンの事情に明るい専門家としても活動し、大学講座にも登壇する。2022年4月より明治大学商学部特別招聘教授に就任。主な著書に「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)。業界紙、WWDJAPANに「ファッション業界のミカタ(ファッション流通企業の決算書の読み方)」を4年間連載中。 記事へのご意見、コンタクトはこちらから。

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