「BTSのRMもファンの脚本家」語る韓国映画の裏側 「別れる決心」手がけたチョン・ソギョンに聞く

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ただし、私としては監督がつらそうにしている姿が気がかりでしたし、監督はシナリオを書くと非常に元気になるということがわかっていたので、これは一緒にシナリオを書かなければいけないと思い直しました。ある意味、シナリオセラピーだったとも言えます。

――日本では、是枝裕和監督を筆頭とした有志たちが、韓国のKOFIC(映画振興委員会)や、フランスのCNC(国立映画映像センター)などをお手本に、映画人の地位向上を行おうという活動が進んでおります。この作品でもエンドクレジットにKOFICの名前が登場していましたが、脚本家の立場から見たKOFICの恩恵はどのようなものがあるのでしょうか?

KOFICというのは、韓国のすべての映画に手助けをしてくれている機関なので、つねに感謝しています。ただ脚本家との関係で言いますと、実はKOFICとはあまり接点がないというのが実際のところです。

ただし、韓国では作家組合やシナリオ作家組合といった、いろいろな団体がそれぞれに声を上げたということもあり、労働環境は以前と比べるとだいぶ改善されたんです。

『別れる決心』の撮影も、1週間で52時間という時間内で撮影を進めることとなりました。現場ではそういうふうに労働環境を改善しようという動きが高まっているので、これは大きな変化だと言えます。

パク・チャヌク監督と仕事をするきっかけ

――そもそもパク・チャヌク監督とお仕事をするようになった経緯はどういったところだったのでしょうか?

パク・チャヌク監督(© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED)

私は「コダック映画祭」という35ミリフィルムの映画向けのシナリオを募集していたシナリオコンクールで入選したんですが、その審査員がパク・チャヌク監督だったんです。そこで質疑応答のようなことがあったんですが、監督が言うには、そこで私がずっとタメ口で話していたそうなんです。

私はまったく記憶にないんですが(笑)。でもパク・チャヌク監督にタメ口で話すシナリオライターが現れたということで、ちょっとした話題になったそうなんです。

でも私としては礼儀がなくてタメ口で話したという意図はまったくなかったですし、そうした記憶もないんですが。ただ考えられるのは、私はせっかちなので、いろんなことを早く話そうと詰め込みすぎて、思っている語尾を最後まで言わない時があるので。

それでちょっとタメ口で話してると思われたのかもしれません。でもいずれにしても、パク・チャヌク監督は私の言葉遣いなどは意に介さず、一緒にお仕事をしようと誘ってくださいました。

――いい出会いだったわけですね。

本当にそう思います。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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