BMWが電気自動車をアマゾンで売るワケ 499万円の「i3」がネットで注文可能に

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ネット販売は日本での販路拡大にどれだけ貢献するか

アマゾンのサイトでi3をショッピングカートに入れ、頭金の99万円を支払うと、コールセンターから電話が入る。充電器の設置場所や車庫の確認をした上で、必要な書類のやり取りは全て郵送で行う。最終段階の登録や納車で近隣にi3を扱う販売店がなければ、移動型セールスの社員が出向く。

つまり人と顔を合わすのは納車の時だけ。実際、注文もあることから、「効率的に新車を購入したいという需要はある」(BMWジャパンの星川氏)と、販路の拡大に期待を寄せている。

BMWジャパンがアマゾンを選んだもう一つの理由は、潜在的な顧客の掘り起こしにある。i3が想定するユーザーは都市部に住む富裕層だが、既存顧客に加えて「環境意識の高い」新規顧客の開拓も狙っている。昨年から国内で販売したところ、全体の約7割が初めてBMWの車を購入するユーザーだった。そのため、既存の車種では取り込めていない潜在的な顧客にどう継続してアプローチしていくかが課題となっていた。

アマゾンで販売するメリットとは?

その点、利用者の好みに合わせて自動で商品を勧める「レコメンド」機能など、膨大な購入情報を活かしたアマゾンのマーケティング手法はBMWにとって魅力的に映った。対面販売では接触が難しかった、環境にやさしい高額な商品を購入したり、検索したりすることが多い利用者に、アマゾンの機能を通じて”アプローチ”できるからだ。将来的には、アマゾンでi3を検索したりした人が、ほかにどんな関心を持っているかをBMWiシリーズのマーケティングに役立てることも視野に入れているという。

i3の国内販売台数は非開示だが、BMWの年次報告書にはグローバルで約1万6000台(2014年)販売したと書かれている。一方、2010年に発売し、EV市場で先行する日産自動車の「リーフ」の国内販売は1万3700台。グローバルでは6万900台とi3の4倍近く販売しているが、まだまだEV市場の規模は小さい。

BMWジャパンのアラン・ハリス社長は2013年の発表会で「i3はまったく新しいモビリティ。特に都市部にはつねに一歩先の未来を考え、かつ環境に気を遣う人が多い」と話していた。アマゾンでの展開が潜在的な顧客開拓にどれだけ貢献するか。BMWの中では”異色”の車だけに、今後もさらに販売面での新たな取り組みを模索することになりそうだ。

(撮影:鈴木紳平)

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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