日本人が知らないフランス「少子化対策」真の凄さ 岸田首相「異次元の少子化対策」に必要なこと

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テレワーク中心の働き方の世帯が都会から引っ越してきた場合、これらの施設は欠かせない。コミュニティー全員が子育てに参加する意識が醸成され、その安心感は子どもを産むモチベーションを後押ししている。これらの施設およびサービスは、母子保護の部門サービスを担当する医師の管理および監督の対象となっている。さらに子どもが身体的、心理的脅威にさらされた場合、自治体は施設の閉鎖命令も出せる。

人口減に苦しんできた過疎化が進む小規模の町や村では、移住してきた家族のコミュニティーによる子育て支援の充実が不可欠な要素と考えられている。政府も少子化対策の一環として地方分散とともにコミュニティーの育児施設やサービスへの支援を積極的に行っている。

「子育ては女性が中心」という概念がなくなった

フランスの特筆すべき点は、「子育ては女性が中心」という概念が長年の女性の権利、男女平等政策の積み重ねにより、完全になくなっていることだ。結果、子育てに関心のない男性はいない。同時に子どもを産むのは女性であり、その女性が何を必要とし、何を望んでいるのかという女性の要求や幸福感を尊重する段階に入っている。

家族政策は、国の成り立ち、歴史と文化、宗教を含む価値観などが複雑に絡み合っているので、どの国の少子化対策が優れているとは簡単に言えない。実際、似たような家族支援策を講じている国でも効果を上げている国もあれば、そうでない国もある。

フランスのまねをすればうまくいくわけではないが、ストレスなく出産し、仕事と子育てを両立できる環境整備は急務であり、社会全体で子育てに取り組む点でフランスの政策は参考にはなる。

「異次元の少子化対策」に挑む日本でも幸せを追求する持続可能な発展につながる政策が期待される。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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