日本企業がエンジニアを"爆買い"の実態 そんなに買いまくって大丈夫?

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帝国データバンクの調査によると、人材不足が著しい業種の1位は情報サービス業。当然ながら足りない職種はエンジニアという回答です。その不足を加速化させているのが

2015年問題

です。国内景気と企業のIT投資が回復傾向にある中で、2015年から数年間、大規模なシステム開発プロジェクトが同時期に集中。日本郵政グループやみずほ銀行のシステム統合、あるいはマイナンバー制度へのシステム対応など、大型案件が目白押し。結果としてエンジニアを大量に採用=抱え込みに走る企業が増えています。

1000人など、超大規模採用が登場

「当社では1000人単位でエンジニアの採用をしています」

と明示する求人がネット上に登場するようになりました。それだけ2015年から数年間はシステム開発ラッシュということなのでしょう。

それにしても、開発にかかる人自体を減らす方法はないのでしょうか? システム部門に取材してみたところ

「ないわけではありませんが、日本企業独特の考え方が、システム開発の大型化を避けられない状況にしているのかもしれません」

との回答が返ってきました。業務パッケージや開発ツールを導入すれば開発作業自体が削減され、開発作業に従事するIT人材を削減することができます。ところが、こうした選択をせず、ゼロから作り上げる「スクラッチ開発」を好む傾向があるようです。自社流の業務プロセスや細部へのこだわりが強いため、パッケージを活用してもアドオン開発で費用がかさんでしまうパターンが大半。ならばスクラッチで開発にしよう……となるのでしょう。しかし、

「当社はフルスクラッチで開発をします。コストはかかりますが、オリジナリティ高いシステムが構築できるはずです」

と、システム部門のトップの方が、手間とコストをかけることを誇らしげに語る姿を見ると、違和感を感じてしまうのは当方だけでしょうか? あえて無駄の多い選択をしているように思えて仕方ありません。

ただ、すでに決定したスクラッチ開発を根本から覆すことは不可能で、今後も業界でスクラッチ開発が減る雰囲気はありません。

加えて、業界を問わず、商品やサービスをWeb化・EC化するIT投資が盛んに行われています。IT・Web業界がシステム開発を受注するだけでなく、発注側の事業企業でエンジニアを増員するケースも急増。慢性的なエンジニア不足の中でも、人材の取り合いが加速しています。

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